特別柵に収容のシカ“虐待認められず” 奈良市が調査結果発表

奈良公園のシカを保護している団体が、施設内に収容しているシカに十分なエサを与えていないと指摘されている問題で、奈良市は「虐待は認められなかった」とする調査結果を公表しました。

奈良公園のシカを保護している「奈良の鹿愛護会」は農作物を食い荒らすなどしたシカを施設内にある「特別柵」というエリアで収容していますが、会専属の獣医師から十分なエサを与えず衰弱させているという通報が県や奈良市などに寄せられました。
奈良市は法律に基づいて獣医師や大学教授による立ち入り調査などを進めていましたが、24日、「虐待は認められなかった」とする調査結果を公表しました。
市の調査によりますと、シカの一部が栄養不良でエサやりや水やりなども不十分だったということですが、故意ではなく、明らかな虐待を裏付ける証拠もなかったということです。
また、調査では衰弱による死亡数が多いことや飼育密度が適正ではなかったといった内容も盛り込まれていて、市は愛護会に対して改善を求める行政指導を行ったということです。
奈良市の仲川市長は「虐待ではないことが確認できたのは安どしている。しかし、そこで暮らすシカが本当に望ましい状態であるのかは疑問が残る。改善の余地はあり、特別柵のあり方について今後、議論していく必要がある」話しています。

【奈良の鹿愛護会“指針示してほしい”】
市の調査結果について「奈良の鹿愛護会」の山崎伸幸 事務局長は「虐待はなかったという客観的事実が認められ、われわれの主張が調査で明らかになった」と述べました。
会によりますと、特別柵に収容されているシカのうち、人に慣れていないシカを別の区画に移して密度を減らす新たな取り組みを始めたということですが、「収容するシカの数が増え続けるかぎり衛生状況を保つのは困難だ。県や市などに収容する頭数の上限を示してもらい、それに基づいて運営していきたい」と話していました。

【通報した専属の獣医師“疑問感じる”】
県や市などに通報した「奈良の鹿愛護会」専属の獣医師、丸子理恵さんは「調査に携わった専門家の中にシカのエサの専門家がおらず、調査でもエサについての具体的な指摘がないことに疑問を感じる。特別柵のシカは私が通報したあとも死亡し続けていて、事態は改善されていない」と話していました。

【県は特別柵のあり方を検討】
特別柵をめぐっては、奈良県がすでに施設の環境が不適切だったとする調査結果を公表し、「奈良の鹿愛護会」が有識者のアドバイスを受けて環境を改善するべきだとしています。
県は「特別柵」のあり方について、県の検討委員会に、獣医師や農業関係者なども加えた部会を設置して検討をすすめ、1年後をめどに対策を示すとしています。