奈良ホテル “アインシュタイン演奏のピアノ” 大幅な修理へ

奈良市にある老舗ホテルは、世界的に有名な物理学者 アインシュタインが演奏し、館内で展示しているピアノについて、大幅な修理を来年、行うことを決めました。

奈良市の老舗ホテル「奈良ホテル」は、いまから101年前の1922年、物理学者のアインシュタインが初めて来日した際に弾いたピアノを、当時と同じ場所で展示しています。
ホテルは、当時の音色を維持するため、これまでピアノの音に影響を与えるような修理を行っていませんでしたが、製造から100年以上たち、弦をたたいて音色を出すハンマーという部品で劣化が目立ち始めたことから、ホテルは、この部品をすべて入れ替える修理を、実施することを決めました。
同じ材料で修理できないため、いまとは音色が変わるということで、奈良ホテルの津川あかねさんは「博士が弾いた当時と音は変わりますが、ピアノをこれから、100年、200年先も長く楽しんでもらうために決断しました」と話していました。
修理は来年(令和6年)1月17日から3週間かけて行われる予定で、ホテルは修理前の1月13日に演奏会を開くことにしています。

【博士のピアノ】
アインシュタインが弾いたピアノは、1900年ごろ、アメリカの会社が製造したものです。
鍵盤には、いまでは珍しい象牙が使われ、アインシュタインは101年前の12月18日の夜、外出先からホテルに戻った際に演奏したということです。
その様子は写真におさめられ、奈良市の老舗ホテルの壁に飾られています。
ピアノはいまでこそ、演奏が行われた当時と同じ場所で展示されていますが、終戦後は行方がわからなくなっていました。
所在が分かったのは1992年。
JR西日本の本社の移転に伴って、備品などを整理していた社員が、地下の倉庫で発見しました。
そして現在、ホテルに飾られている「写真」も見つかったことから、2009年、晴れてアインシュタインが弾いたものであることが、確定しました。
ピアノはその後、外装の修理や調律などが行われ、アインシュタインの来館100周年を祝う場など、記念の場で演奏されてきました。
ただ音色を維持するため、手をつけていなかった内部の部品にも、傷みが目立ち始めていました。

【博士の日本滞在】
アインシュタインは、ノーベル物理学賞を受賞した翌年の1922年の11月17日から12月29日の日程で、日本の出版社の招待を受けて妻のエルザとともに初めて日本を訪れました。
かねてから日本に強い関心を持っていて、43日間の滞在中、九州から東北までの各地で講演を行ったほか、観光を楽しんだということです。
奈良には12月17日から2泊3日で滞在し、その際に宿泊したホテルでピアノを演奏したとされています。
奈良のことについて自身の手記の中で「人に慣れた鹿が群れてくる」「人に寄って来て、嗅ぎ回っている」と語っています。
ピアノだけでなく日本を訪れたアインシュタインの足跡は、今でも多くの人の関心を寄せています。
東京のホテルでアインシュタインがベルボーイに手渡した2枚の直筆のメモが6年前、競売にかけられ、日本円にして2億円余りで落札されています。