奈良公園 シカの食害から守る 伐採した外来種の木で柵を設置

奈良市の奈良公園で、植樹された桜の木をシカの食害から守るため、園内で伐採された外来種のナンキンハゼを使った柵が設置されました。

奈良市の奈良公園では、奈良県がかつての景観を取り戻そうと園内に増えてきた外来種のナンキンハゼを伐採し、松や桜などを植える取り組みを進めています。
こうしたなか、奈良女子大学の学生が、県や企業の協力を得て、伐採されたナンキンハゼを使った木を守る柵を製作し、10日、奈良公園の桜の幼木のまわりに設置されました。
桜などの苗木や幼木はシカが食べてしまうため、柵はシカの口が木に届かないように隙間は10センチほど、高さは1メートル20センチほどに設計されています。
また、ナンキンハゼはシカが好まない樹木で、シカを寄せ付けない効果も期待できるということです。
柵は「木が大きく育つまで守る」という意味をこめて、「子守木(こもりぎ)」と名付けられました。
今回の取り組みの中心となった現在、奈良女子大学大学院の川合布公帆さんと奈良女子大学の卒業生、小西くるみさんは、「公園の生態系維持のためにナンキンハゼを伐採し、そのまま廃棄するのではなく活用できるのはうれしい。木がどんどん成長して大きくなるのを楽しみに見守り続けたい」と話していました。
柵は、木が順調に成長したあとは公園のベンチとして再利用される予定だということです。

【外来種「ナンキンハゼ」とは】
ナンキンハゼは、中国が原産の落葉樹で、葉の形がハート型で紅葉も美しいことから、全国的に公園や道路沿いに植えられています。
奈良公園では、もともと昭和初期に園内の街路樹として植えられましたが、その後、公園の東側に位置する春日山原始林や若草山などの山間部へも広がっています。
生命力が強く、シカが好まないことから公園内で増えていて、県では園内の生態系を乱す懸念があり、昔ながらの景観が損なわれているとしておととし(令和3年)から伐採を始めています。
県によりますと、奈良公園内のナンキンハゼの伐採は、原始林では今月13日に終了する予定で、ほかのエリアでもあと2年から3年以内に終わる見込みです。
ただ、小さい木や伐採後に出てきた新たな芽などがあることから、県は必要に応じて今後も対応を続けることにしています。

【中学生が「どんぐり」が実るウラジロガシを植樹 外来種から原始林保全へ】
奈良市の世界遺産、春日山原始林に残る貴重な樹木を守ろうと、地元の中学生が、「どんぐり」が実るウラジロガシを植樹しました。
世界遺産の春日山原始林は、カシやシイなど昔から自生する樹木がおよそ250ヘクタールにわたって広がり、国の特別天然記念物にも指定されていますが、若い木がシカに食べられて育ちにくくなるほか、外来種が増えて貴重な森林の維持が課題になっています。
このため、奈良県は、5年前から植樹を行って樹木を守る活動を続けていて、10日は、授業で原始林について学んでいる奈良市の飛鳥中学校の2年生の生徒8人が、「どんぐり」が実るウラジロガシの苗、15本を植えました。
生徒たちは、木が枯れて樹木が減っている山の斜面にスコップで穴をほり、高さ20センチの苗を丁寧に植えていきました。
そして、シカが苗を食べるのを防ぐため、周りをネットで囲って対策をほどこしていました。
参加した男子生徒は、「原始林が昔みたいに豊かな森に戻ったらなと思って植えました。大きく育ってほしいです」と話していました。
また、別の男子生徒は、「多くの種類の木がたくさんあって、シカと木が共存する山になってほしいです」と話していました。

【公園管理の課題はシカ】
奈良公園には、国の天然記念物「奈良のシカ」が1200頭余り生息していて、主に公園内の草のほか、樹木の新芽や幼木を食べています。
県によりますと、県などが植樹した木についてはシカが食べないように柵を設置したり、幹を金網で覆ったりする対策を取っていますが、最近はシカが好まない外来種のナンキンハゼが増えてきたことや、シカの数も増えていることから、樹木の食害が目立つようになり、公園内の外来種を伐採してかつての景観を取り戻そうという取り組みを進めるうえでの課題となっています。
県地域デザイン推進局の竹田博康次長は、「奈良公園はシカと人と木々が共生している場所だが、シカは野生なのでどうしてもおいしい木の芽を食べてしまう。これからも対策を考え、新しい木を育てていって本来の公園の景色を未来に残していきたい」と話しています。