古墳の魅力を伝える「こふん皇子」の活躍に注目 奈良

全国に16万基以上あるといわれる古墳の魅力についてたくさんの人に知ってもらいたいとSNSを使って情報を発信する研究者がいます。
みずからを「こふん皇子」と名乗っていてちょっと緩い感じもするのですが、ただ者ではないんです。
リポートでお伝えします。

去年12月、奈良市の富雄丸山古墳で、大発見がありました。
丸い古墳の外側の埋葬施設から、これまで見たことがない盾の形をした大型の青銅の鏡が出土しました。
さらにその上には、長さ2メートル30センチ余りの鉄の剣が乗せられていました。
「国宝級」の発見として、注目を集めました。

調査を担当したのが奈良市埋蔵文化財調査センターの学芸員、村瀬陸さん(32)です。
調査の中心的な役割を担い、極めて珍しい出土品を発見したことで一躍「時の人」になりました。
大学生のころから遺跡の調査に携わり、謎が多い古墳の研究に没頭してきました。
その魅力をたくさんの人に知ってほしい。
研究者として調査を進めるかたわらSNSを使って調査や研究の情報を発信しています。
SNSで名乗っているのは、その名も「こふん皇子」です。
さらに村瀬さんは個人としても調査や研究を進めています。
注目したのは、奈良市北西部の佐紀古墳群です。
樹木に覆われていてどのような構造なのかもはっきりせず、いまも謎が多く残されていますが、宮内庁が管理しているため、特別な許可がない限り、研究者でも立ち入ることができません。
そこで上空から航空機に搭載したレーザーを使って古墳の形を測量する最新の方法を使おうと考えたのです。
この方法を使えば、古墳の形が正確に3次元で捉えることができるのです。
ただ、問題となるのが調査にかかる費用です。
思いついたのが、全国の考古学ファンなどから費用を募るクラウドファンディングでした。
のべ340人から500万円の寄付が集まり、古墳群一帯の測量を実施することができました。
村瀬さんは、寄付をしてもらった人たちに向けて、オンラインで成果を報告しました。
「富雄丸山古墳は4世紀後半、この(佐紀)石塚山古墳が4世紀末。コナベ古墳が5世紀初頭になるんですけども、段を持つっていう構造が共通してくるというのが非常におもしろい成果だなと考えております」。
たくさんの人たちの協力で実現した今回の調査。
形や構造がはっきりとつかめたことで古墳群をつくった集団のつながりや特徴を解き明かす手がかりになると村瀬さんは考えています。
「一個人としては、やっぱり古墳をみんなに知ってもらいたいう気持ちがいちばんありますので、今回の成果を佐紀古墳群という、そこまで知られていなかったものを大きくしていただくチャンスになりますので、引き続き発信もしていきたいと思ってます」。
村瀬さんは市の職員として、ことしの冬から、「国宝級」の出土品が見つかった富雄丸山古墳の埋葬施設を再び発掘する予定です。
そして、個人としても測量を行った佐紀古墳群の報告書をまとめるため研究を進めることにしています。
「こふん皇子」のこれからの活躍に目が離せません。