奈良公園内の旧知事公舎活用したホテルがオープン

奈良市の奈良公園内に旧知事公舎を活用した新しいホテルが29日オープンし、関係者が出席してセレモニーが行われました。

オープンしたのは奈良市の奈良公園内にある旧知事公舎の建物を活用したホテルで、29日はホテルの正面玄関前で山下知事やホテルの関係者がテープカットしてオープンを祝いました。
大正11年に建てられた旧知事公舎は歴代の知事の邸宅や来賓を迎える場として平成29年まで利用され、この建物を残しながら奈良公園の9000坪余りの敷地を東京の不動産会社などがホテルとして整備しました。
新たに建てられた宿泊棟は43の客室があり、なかには鹿や藤の花など奈良を感じさせるデザインがあしらわれひのき風呂から庭園を眺められる部屋もあります。
ホテルの羽鳥寛之総支配人は、「これから奈良の魅力を伝えていけるようチーム一同務めたい」と話していました。
奈良県によりますと県内を訪れる観光客は日帰りが多く宿泊施設や消費額の少なさが課題となっていて、県では高級ホテルの誘致にも積極的に取り組んできました。
今回オープンしたホテルは1泊2名で12万円以上と高い値段設定で、県では国内外の富裕層などの利用を期待しています。

【奈良県の戦略は】
旧知事公舎に高級ホテルがオープンした背景には宿泊施設の充実を図る奈良県の戦略があります。
県によりますと、県内の旅館とホテルの客室数はコロナ禍前の令和元年で9735室と、全国平均のおよそ3万6000室を大きく下回って全国で3番目に少ない状況でした。
県内を訪れる観光客は令和元年に平成22年以降で最多となる4500万人余りまで増えましたが、日帰りが多く、宿泊した人は1割ほどしかいませんでした。
また、観光客が県内で消費する金額は宿泊の場合およそ2万5000円と日帰りの5倍以上になるということです。
そこで県では「奈良県観光総合戦略」を策定し、客室数を増やすだけでなく国内外の富裕層に対応した高級ホテルなどの誘致にも積極的に取り組んでいて、近年では奈良公園の県有地や奈良市役所近くに高級ホテルの開業が相次いでいます。
来年には、全国で高級旅館などを運営する企業が奈良市の「旧奈良監獄」を活用したホテルをオープンさせる予定で、今後も県内で新たなホテルの開業が続く見込みです。
ならの観光力向上課は、「今後も宿泊施設の質と量の充実を図りながら県内での滞在型観光を推進し、経済の活性化につなげたい」と話しています。