曽爾村 有機農業始める移住者を支援 流通や販路開拓を共同で

奈良県東北端に位置する曽爾村では、有機栽培を始める移住者たちを支えようと、流通や販路開拓を共同で行う新たな仕組みを作りました。

6年前、大阪から曽爾村に移住した農家の山下竜一郎さんは、持ち主が耕すことが難しくなった畑を引き継ぎ、野菜の栽培をしています。
作っているのは、おもに小松菜やホウレンソウで、化学合成した農薬や肥料を使わない農業、有機農業で取り組んでいます。
堆肥は「おから」をじっくり発酵させ、水は山からの湧き水を使っています。安心して食べられる野菜にこだわっているからです。
山下さんは「上に雑木林もあり、人工的なものは入ってない自然の水だと思います。野菜にはちょうどいいかなと思って使っています」と話しています。

村に来るまで料理人の道を歩んできた山下さん。
村に移住してきて、村で農業をすると決めたとき、選んだのは、化学合成された農薬や肥料を使わない野菜作りでした。
宇陀市にある農園で本格的に有機栽培を学び、有機農業に取り組み始めました。
3年前には、化学合成された農薬や肥料を使わないなどの基準を満たした「有機JAS」の認証を受けました。

曽爾村には、山下さんと同じように有機栽培を志す移住者が増えてます。
村では山下さんたちの取り組みを後押ししようと、県の中央卸売市場と共同で、堆肥や土作りの研修会を開き、有機栽培の推進に取り組んでいます。
また配送や販路開拓の負担を減らし、少しでも農業に専念できる環境を整えようと、ことし4月に村の農林業公社や農家どうしが協力して新たな仕組みを作りました。
この仕組みでは、農家どうしが立ち上げたグループ「曽爾FOOD」のメンバーどうしで、販路開拓や配送などを協力して行うとともに、村が設立した曽爾村農林業公社も販路開拓や配送などを支援していきます。
6月からは、配送の一本化に向けて、共同配送の実証実験が始まりました。
「ガソリン代もそうやし時間もだいぶ空いてくるんで、だいぶ楽です。助かるし、出荷する人も増えてくるんじゃないですか」と山下さんは、期待しています。

6月半ばに開かれたグループの会合には、大阪府内で直売所を展開する企業を招きました。
山下さんは「楽しんだことがお金にかわるような、仕組みを作っていきたいなと思うので共感してほしい。曽爾村への移住者を増やしたい。将来のために協力してもらえたらなと思います」と自らの思いを話しました。
会合に招かれた企業の小川泰文さんは「生産者自身が自分のことだけじゃなくて、周りの農家のこともひっくるめて、主体的に考えているところは、すごい可能性だなと思いました」と話していました。
グループではこれからメンバーをもっと増やして、曽爾村の農業を盛り上げていきたいとしています。