奈良公園の鹿 3年ぶりに1200頭超 保護団体が調査

奈良公園の鹿の数はことしは去年よりおよそ50頭多い1230頭あまりで、3年ぶりに1200頭を上回ったことが、保護団体の調査でわかりました。

奈良市の奈良公園やその周辺に生息する鹿は「奈良のシカ」として国の天然記念物に指定されていて、保護活動を行っている「奈良の鹿愛護会」が毎年7月にその数を調べています。
ことしの調査は7月15日と16日の2日間、行われ、その結果、奈良公園一帯で1233頭の鹿が確認されました。
1200頭を超えるのは3年ぶりで去年より51頭多くなっています。
このうち子鹿は177頭で去年より50頭あまり(54頭)減っていますが、愛護会では鹿の生態系に影響を与えるほどの変動ではないと見ています。
一方、ことし6月30日までの1年間に死んだ鹿の数は去年より14頭多い144頭でそのうち35頭が交通事故によるものだったことから愛護会では引き続きドライバーなどに注意を呼びかけたいとしています。
ことしの調査結果について、鹿の生態に詳しい北海道大学大学院の立澤史郎特任助教は、「コロナ禍の影響で鹿せんべいなどの食べ物がもらえない中で、もっと減ってもおかしくはなかったが、自然の食べ物を採るようにシフトできた結果、非常に安定した数が確認されたと思っている。今は若年齢化しているのでこれから数年は頭数が増える可能性がある」と話しています。

【鹿の頭数の変遷】
奈良公園の鹿の数はこの10年間の平均がおよそ1200頭となっています。
平成26年に1076頭だったのが4年前の令和元年には1388頭とおよそ1.3倍に増えました。
しかし、その後は減少に転じ、おととしは1105頭まで落ち込んでしまいました。
それから再び増えはじめ去年は1182頭、ことしは1233頭と3年ぶりに1200頭を超えました。

【鹿の頭数調査とは】
この調査は奈良公園やその周辺に生息する鹿の数の変動を明らかにし、保護活動に生かそうと、70年前(昭和28年)から毎年、行われています。
調査は早朝に行われ、ことしの場合、2人一組、もしくは3人一組の調査員が、13のコースに分かれ、山から下りてくる鹿を迎えるように奈良公園一帯を西から東へローラーを掛けるようにして歩き各地点にいた鹿の数を調べました。
早朝に調査を行う理由としては▼鹿が活発に動かない時間帯だということや▼鹿が移動する要因になる「人」が少ないことなどがあげられるということです。
鹿の数は双眼鏡を使う場合があるものの人の目で確認し、オスとメス、子鹿に分けて数を数えました。
調査では重複がないよう▼すべての班が歩調を合わせて一斉に調査を始める基準のラインを途中の2カ所に設けているほか▼どの地点で調べたかを細かく記しておいて、終了後に他の班と確認するといった工夫をしているということです。
こうして集計されたデータは、保護の計画や啓発活動の基礎資料などに役立てられています。
奈良の鹿愛護会の宇津木謙一事業課長補佐は「全体として非常に合理的な数え方で、70年前からほとんど変わらない。何か問題が出てこない限り、今後もこの方法で調査を続けていくと思う」と話していました。