柔道 大野将平選手 指導者育成研修で渡英へ 天理大出身

奈良の天理大学出身で、柔道男子73キロ級でオリンピック2連覇を果たした大野将平選手が会見を行い、来年度から2年間、指導者育成の研修でイギリスに派遣されることを明らかにしました。
そのうえで今後の去就について、「柔道家に引退はない。一生修行だと思っている」としています。

大野選手は山口県出身の31歳。
オリンピック初出場だった2016年のリオデジャネイロ大会の男子73キロ級で金メダルを獲得したあと、おととしの東京大会も制して日本柔道7人目のオリンピック2連覇を達成しました。
その後、みずからの階級では実戦復帰を果たしていませんでしたが、7日は都内で記者会見を行い、JOC=日本オリンピック委員会が行う若手指導者を育成する研修事業で来年度から2年間、イギリスに派遣されることを発表しました。
これについて大野選手は「もう一度自分自身に苦労をという思いもあり決めた。いずれは柔道を通して国際的な人材になりたい」と理由を明かしました。
そのうえで今後の去就について、「柔道家に引退はない。一生修行だと思っている」と話した一方で、3連覇がかかる来年のパリオリンピックについて聞かれると「いまも稽古やトレーニングを続けている中で、同じ階級でやりたい選手がいなくなったのが大きい。東京オリンピックというものを経験させていただいて、心が燃えるものが出てこなかった」と出場は目指さないことを示唆しました。
また、これまでの柔道人生を振り返り、「柔道を学んでオリンピック2連覇できたこと。自分でプレッシャーをかけてそれを実現できたことが柔道人生一番の誇りだ。日本の柔道を世界に体現できた自負は持てる」と話していました。

【大野選手の経歴は】
大野将平選手は、山口県出身の31歳。
中学生の時に親元を離れて上京し、「平成の三四郎」と呼ばれた古賀稔彦さんなど、数々のオリンピックメダリストを輩出している柔道の私塾、「講道学舎」で柔道に打ち込みました。
その後、2010年に奈良県にある天理大学に進学して大学4年生だった2013年には世界選手権で初優勝を果たしました。
内股や大外刈りなどを得意とし、相手を圧倒する柔道で、オリンピック初出場だった2016年のリオデジャネイロ大会で金メダルを獲得しました。
オリンピックのあと大学院での研究を優先させるため2017年に一時、休養しましたが、その後復帰し、2019年の世界選手権では、警戒してまともに組んで来ない相手を豊富な崩しのパターンと組み手の力強さで自分の間合いに引き込み、6試合すべてを一本勝ちする圧倒的な強さを見せて3回目の優勝を果たしました。
そして、圧倒的な金メダル候補として臨んだ東京オリンピックでは日本柔道7人目のオリンピック2連覇を達成しました。
東京オリンピックのあとは去年(2022年)4月、体重無差別で日本一を決める全日本選手権に出場し、その後、去年12月の国際大会、グランドスラム東京では代表に選ばれたもののコンディション不良を理由に欠場していました。

【“王道の柔道”を貫く】
大野将平選手は実績だけでなく、技術の高さや礼儀作法など、柔道家として、心技体すべての面で国内外から高い評価を受けています。
技術の面では「しっかり両手で組んでから投げる」という日本柔道では王道とも言える形にこだわり続け、金メダルを獲得した2016年のリオデジャネイロオリンピックでその成果を存分に発揮しました。
敗れた相手の選手へ敬意を払うため優勝が決まってもすぐには喜びは表に出さず深々と礼をした姿は世界から称賛され、日本では道徳の教科書の題材にもなりました。
そして続く東京大会では大きなライバルといえる存在がいない中、「自分を超える」ことをテーマとし、稽古に打ち込みました。
延長にまでもつれた決勝も含め、両手で組んで攻める姿勢を貫き、最後は技ありを奪って金メダルを獲得しました。
オリンピック2連覇を果たした時でさえ表情を崩さず深く礼をする姿は変わらず、柔道家としての評価をさらに高めていました。

【東京五輪後に苦悩の日々も】
東京オリンピックで2連覇を果たしたあと、周囲からはパリでの3連覇への期待が寄せられましたが、大野選手にとっては苦しい日々が続きました。
東京大会からおよそ3か月後に本格的な練習を再開したあとには「心が折れそうになりながらやってきたので、次のオリンピックを目指せば、今まで以上の苦しみやつらさが待っているのは容易に想像できる。それに耐えられる覚悟を持つために心の炎が燃えてくるのを待っている状態だ」と、みたび頂点を目指すためのモチベーションが高まる時を探っていました。
その後も、拠点とする天理大学を中心に稽古を積み、去年4月には体重無差別で日本一を決める大会、「全日本選手権」に出場し、90キロ級の選手を相手に真っ向から組み合う柔道を披露していました。
去年12月の国際大会、グランドスラム東京にエントリーした大野選手は東京オリンピック以来、およそ1年4か月ぶりに73キロ級での実戦の場になることから注目を集めましたが、コンディション不良で欠場していました。
このとき、「日本代表として戦う心と身体を大会までにつくり上げる事ができませんでした。今後については自分としっかり向き合い決めたいと思います」とコメントを出していました。