乳がんの後も温泉を楽しむ「入浴着」畿央大学のグループが開発

乳がんを患った女性たちに術後も見た目を気にすることなく温泉や銭湯などを楽しんでもらおうと、畿央大学の研究グループは、術後のあとが目立ちにくい「入浴着」を新たに開発しました。

開発したのは奈良県広陵町にある畿央大学の村田浩子教授らの研究グループです。
乳房などを切除した乳がん患者たちは、温泉や銭湯などに入る際に「入浴着」を身につけるケースがありますが、製品によっては体に貼り付いて術後のあとが目立つなどの課題もありました。
そこで、村田教授らのグループは患者などに聞き取り調査を実施したうえで、6年ほどかけて新たな入浴着を開発しました。
開発されたものは、はっ水性や伸縮性などが高い生地を組み合わせたもので、水に濡れても体の線が目立たないように、胸の部分にひだを組みこんだデザインとなっているのが特徴です。
温泉や銭湯で使われる頻度も考えて使い捨てとし、1着あたりの値段は500円ほどに抑えました。
村田教授は「当初はなかなか思うような性能を持ち合わせる生地が見つからなかったが、繊維メーカーにも通い、今回の生地を見つけることができた。今後、いろいろな方に『入浴着』を身につけて、もとのように温泉を楽しんでもらいたい」と話していました。
今回、開発された「入浴着」は、12日から県内2か所の温泉施設で販売されることになっています。

【施設でも要望の声】。
周囲の目を気にせず温泉などを楽しみたいという声は、これまでにもあがっていました。
天理市の公衆浴場では3年ほど前から、「体に傷あとがあっても施設を利用できるのか」とか「入浴着などを着たままでも利用できるか」といった問い合わせが利用者から寄せられていたということです。
そこで、この施設では、新たに開発された「入浴着」を12日から館内の売店で販売することを決めました。
「奈良健康ランド」の湊和行マネージャーは「従来の入浴着は単価も高く、手に入りにくかったが、新しい商品は手軽な金額で買える。見た目を気にせず入浴を楽しんでもらえるよう、施設としても引き続き環境づくりに取り組んでいきたい」と話していました。

【乳がんになる割合 9人に1人】。
奈良県の最新の統計によりますと、県内で2017年の1年間に新たにがんと診断された女性のうち、乳がんの患者は1054人、率にして22%と、最も多くなっています。
また、乳がんの啓発活動に取り組む団体の試算では、女性が生涯で乳がんになる割合は9人に1人にのぼると言われています。
治療法は手術や放射線、抗がん剤などの薬物を使ったものなどがありますが、畿央大学の村田浩子教授によりますと、このうち乳房などの切除を伴う手術は、術後に見た目が変わることに悩みを抱える人も多いということです。
村田教授の研究グループの一員でみずからも12年前に乳がんを患って左側の胸を切除したという畿央大学講師の中西恵理さんは「胸の部分にギャザーがあり、生地も肌に張り付きにくい素材なので胸の左右差を気にすることなく着られるようになったと思う」と話していました。
また、今回、患者の立場から開発に協力した松田友理子さんは「術後に自分の姿を見るのも怖かったし、周囲の人に姿を見せるとびっくりされるのではないかと、温泉などに行くのはためらっていた。新しい入浴着は水はけもよく不快感がないので、ぜひ今後、これを持って出かけてみたい」と話していました。