ABCC=原爆傷害調査委員会の資料 今年度は発見に至らず

長崎に原爆が投下された際に国が定める地域の外にいた「被爆体験者」の被爆者としての認定をめぐって厚生労働省は、業者に委託してアメリカの調査委員会が長崎で実施したとされる研究資料の調査を行っていましたが、今年度中には資料の発見には至らなかったことを明らかにしました。
厚生労働省は引き続き、新年度以降も調査を実施するということです。

厚生労働省が調べているのは、アメリカが、放射線が人体に及ぼす影響を調べる目的で設置した、ABCC=原爆傷害調査委員会が作成した資料です。

厚生労働省は、去年10月に調査を行う業者と委託契約を結び、原爆投下後の放射性物質を含んだ雨などの降下物の拡散状況がわかる資料などを調べていました。

調査は、アメリカの国立公文書館など3か所に保存されている資料を対象に行われましたが、29日、業者から厚生労働省に報告があり、3か所のうち2か所で調査を終えましたが、これまでに資料の発見には至らなかったということです。

このため厚生労働省は、新年度以降も調査を継続する方針を決めるとともに、今回の調査の実施を求めていた長崎県や長崎市に対してこれまでの調査経過を伝えたということです。

「被爆体験者」をめぐっては、広島への原爆投下直後に降ったいわゆる「黒い雨」では、国は「被爆地域」の外にいた人でも「黒い雨」を浴びた可能性が否定できない場合などは被爆者と認定する新たな基準を設けた一方、長崎については「客観的な記録がない」などとして認定しておらず、調査の行方が注目されています。