ガンジーの胸像 長崎市が設置場所を再検討へ

長崎市は、インドが寄贈を申し出た、独立の父とされる「ガンジー」の胸像を観光名所・眼鏡橋の近くに設置することを発表していましたが、地域住民への説明が十分ではなかったとして、設置場所を再検討することになりました。

インド独立の父とされる「マハトマ・ガンジー」の胸像は去年10月、長崎市を訪れた駐日インド大使が寄贈を申し出たものです。

この胸像の設置場所について、長崎市はインド側の提案を受けて、観光名所・眼鏡橋近くの中島川公園に今週中にも設置することを発表していました。

しかし、「なぜここにガンジーの像を設置するのか」などと市民からの意見が相次ぎ、近隣の自治会などへの説明に十分な時間をかけていなかったとして、設置場所を再検討することになりました。

市によりますと、新しい設置時期は未定だということです。

胸像は、台座も含めると、高さがおよそ2メートル40センチ、幅がおよそ1メートル70センチあり、制作費などはインド側が負担することになっているということです。

長崎市は「関係者の皆様との調整に不十分な点があったことを深くおわびいたします」とコメントしています。


【設置をめぐる経緯】
インドから寄贈の申し出があった「ガンジー」の胸像の設置をめぐるこれまでの経緯です。

去年10月、シビ・ジョージ駐日インド大使が長崎市の鈴木市長を訪問した際、ガンジーの胸像を寄贈したいと申し出ました。

その5か月前の去年5月には、G7広島サミットに合わせて、広島市内にも平和公園近くに大きさもほぼ同じ胸像が設置されていました。

駐日インド大使館から長崎市に具体的な設置場所の依頼があったのは去年12月下旬。

平和公園に設置したいというものでした。

これに対して長崎市は、年が明けたことし1月半ば、「平和公園は平和と人類愛をテーマに抽象的なモニュメントを受け入れてきていて、個人の像はコンセプトにそぐわない」として、代わりに稲佐山公園を提案しました。

長崎市にとっては「市民の憩いの場で、観光客も来るし、国際理解にもつながる」と考えての提案でした。

ところが、その日のうちにインド側から、稲佐山への設置を希望しないという連絡がありました。

「多くの人が集まる場所よりも、平和公園に近いところで、公園を訪れる人に見てもらえる場所を希望する」という理由です。

ほかに設置場所がないか、市はインドとも調整しましたが、双方が合意できる設置場所がなかなか見つからない状況が続きました。

その後、先月13日、インド側から設置場所を「眼鏡橋周辺で検討できないか」と連絡がありました。

先月22日、長崎市も「原爆の当初の投下目標地点に近く、平和を感じられる憩いの場である」として、観光名所・眼鏡橋近くの中島川公園を提案し、双方が合意していました。

【長崎市民は】
職場が中島川公園の近くだという長崎市在住の女性は、「この辺りがインドとゆかりがあるのかわからない。観光客も多く通る場所なので、勘違いされないようにしてほしい。設置場所を白紙に戻したのはいいことだと思う」と話していました。

卒業旅行で千葉県から訪れた2人の女性は、「『なぜ急にここにガンジーが』と思うかもしれない」とか、「景観に影響がなければいいと思う。逆に観光名所になるかもしれない」と話していました。

【長崎市は】
マハトマ・ガンジーは、非暴力や不服従による抵抗運動によって1947年にイギリスからの独立を実現し、その翌年に暗殺されましたが、インド独立の父として国民の広い尊敬を集めています。

長崎市は「ガンジーの理念や活動は国際的に評価されているうえ、市のまちづくりの方針『平和を愛し、平和の文化を育むまち』の考え方とも一致していることから、胸像の寄贈を受けることにした」としています。