IR 長崎県の整備計画は審査継続 知事“チャンスはある”
カジノを含むIR=統合型リゾート施設について、政府は14日、大阪の整備計画は認定する一方、長崎県の整備計画については観光庁が設置した有識者による委員会が今後も審査を続けることにしています。
長崎県の大石知事は「継続審査ということ自体は『不認定』ということではなく、認定されるチャンスはまだ十分にあると理解をしている」と述べ、国の認定に向けて引き続き取り組んでいく姿勢を強調しました。
政府は14日、IR推進本部の会合を開き大阪府と大阪市の整備計画を了承し、これを受けて斉藤国土交通大臣が正式に認定しました。
一方、長崎県の整備計画については、観光庁が設置した有識者による委員会が今後も審査を続けることにしています。
斉藤国土交通大臣は閣議の後の会見で「審査を継続している具体的な理由については、審査中のため、お答えを差し控えさせていただきたい」と述べました。
また長崎県の整備計画では2027年度の開業を目指すとしていて、開業が遅れる公算が大きくなったのではないかと質問されたのに対して、「整備計画の審査については期限を設けることなく丁寧かつ十分な審査をすることとしている。現時点で認定時期について申し上げられるものではない」と述べました。
これについて長崎県の大石知事は14日の記者会見で「継続審査ということ自体は『不認定』ということではなく、認定されるチャンスはまだ十分にあると理解をしている」と述べました。
そのうえで、「IR誘致の成功というのは県政の重要課題だと思っているので引き続き早期に区域認定をいただけるよう、県として取り組みを進めていきたい」と述べました。
長崎県は観光振興や地域経済の活性化を図るため佐世保市のテーマ−パーク「ハウステンボス」にカジノを含むIR=統合型リゾート施設の誘致を進めてきました。
去年4月、長崎県は国に整備計画を申請し、計画では開業時期は2027年の秋ごろ必要な資金調達額は4383億円、開業5年目の純利益は300億円余りを見込んでいることが盛り込まれています。
しかし、整備計画をめぐっては最近、資金調達に関わるスイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」が経営危機に陥り、誘致への影響を懸念する見方も出ています。
政府が長崎県の整備計画を継続審査としたことについて誘致先の佐世保市では様々な声が聞かれました。
80代の男性は「観光の発展を考えると挫折だと思います。ただ、継続審査で時間ができたので、さまざまなことを考え直すいい機会かもしれないと思いました」と話していました。
また、70代の女性は「賭け事に溺れてしまう人もいるので、IRには反対ですが今後も進めるのであれば、ちゃんと依存症の対策をする必要があると思う」と話していました。
また、20代の男性は「なぜ認められないのかという原因が大事だと思います。外国の旅行者を増やすための取り組みだと思いますが、治安が悪くならないようにしてまちにとってプラスになるような制度や政策を作ってほしいです」と話していました。
政府が長崎県の整備計画を継続審査としたことについて佐世保市の朝長則男市長は「九州・長崎IRは、訪日観光客の地方への新たな流れを創出し、九州観光をけん引する起爆剤となるものだ。佐世保市は官民一体で長年にわたってIRの誘致推進活動を行うなど、IRの実現を切望している。継続審査ということなので、できるだけ早く審査が行われることに期待し、引き続き長崎県と一体となり、IRの実現に向けて取り組んでいく」というコメントを出しました。
政府が長崎県の整備計画を継続審査としたことについて長崎県のIR事業の運営主体となる特定目的会社、「KYUSHUリゾーツジャパン」の大屋高志社長は「大阪の計画に認定が出たということは現実に日本にIRができるということなので、むしろ『ほっ』とした気持ちがある。今回、長崎の計画は審査に落ちたということではなく、長崎も大阪と同様にしっかりとした計画を申請しているので、認定を信じて待ちたい」と述べました。
そのうえで、「認定を受けることができれば2027年の開業に向けて一刻も早く、スケジュールを守れるよう取り組んでいく」と述べました。
政府が長崎県の整備計画を継続審議としたことについてIRの誘致に反対する市民団体「ストップ・カジノ!長崎県民ネットワーク」の朝長万左男共同代表はNHKの取材に対し、「政府には長崎県の今の計画のままでは認可できないという考えがあるのではないだろうか。私たちは金融機関を含めて支援体制が不十分などとして県に対してIR誘致計画を断念するよう訴えてきたが、今回認定されなかったことでその方向性が見えてきたのではないかと思う。引き続き計画反対の声を上げていく」と話していました。