松本駅前の「井上百貨店」 来年3月末で営業終了へ

松本市唯一の百貨店で松本駅前のシンボルとして親しまれてきた「井上百貨店」が店舗の老朽化などを理由に来年3月末で営業を終えることになりました。
テナントの一部には山形村にある系列のショッピングセンター「アイシティ21」に移ってもらうことを検討しています。

松本駅前にある「井上百貨店」は、1979年にオープンした地上7階、地下1階の市内唯一の百貨店です。
売り場面積は8000平方メートル余りで、中高年層を中心とした多くの市民らに親しまれてきました。
1980年代ごろには、年間200億円ほどの売り上げがあったということですが、ここ数年の売り上げは郊外型の大型店との競合などを背景に、最盛期の半分以下となっていました。
井上百貨店によりますと、今の店舗が建てられてから45年が経過し、設備の更新には多額の費用がかかることなどから、来年3月末で営業を終えることになりました。
今後は、売り上げが好調な山形村にある系列のショッピングセンター「アイシティ21」に重点投資する方針で、井上百貨店のテナントの一部には「アイシティ21」に移ってもらうことを検討しています。
また、学校の制服部門や商品券部門などは市内の別の場所に残すことも検討しているとしていますが、店舗の後利用については現時点で未定としています。
今回の決定について井上百貨店は、「お客様にご不便をおかけしますが、今後の新たな事業展開に期待していただきたいです」とコメントしています。

「井上百貨店」が来年3月末での営業終了を発表したことを受けて、街の人からは街のにぎわいが失われないか心配する声などが聞かれました。
このうち70代の女性は、「井上百貨店が営業をやめるとは思っていませんでした。昔から贈り物を買うときは必ず井上百貨店を利用していたので残念です」と話していました。
松本市の中心市街地では来年2月の松本パルコの閉店も決まっていて、30代の男性は「生まれたときにはあったデパートなので悲しいです。井上百貨店とパルコは松本を象徴する場所だと思っているので、これからどうなるのか心配です」と話していました。

井上百貨店は、今からおよそ140年前の1885年に、「井上呉服店」として松本市で創業しました。
その後、百貨店となり、1979年には今の松本駅前の店舗に移転しました。
1980年代ごろには、年間200億円ほどの売り上げがあったということですが、ここ数年は郊外型の大型店との競合などを背景に売り上げが最盛期の半分以下となっていました。

井上百貨店の閉店を受け、松本市の臥雲義尚市長は24日の会見で、「商都、松本の象徴的な存在だったので、市内の商業やサービス業に少なからぬ影響があると考えている。ただ、松本駅周辺の区画整理事業を行ってから50年ほどが経過し、街を更新するタイミングでもある。松本市の中核エリアを再活性する格好の機会が訪れたと受け止めたい」と述べました。
そのうえで、「松本駅から松本城周辺まで、市街地の中核エリアの見取り図を描き直す必要がある。商業はもとより、観光、交通、住居、金融、そして都市計画の専門家を交えてオール松本の態勢で中核エリアの再設計に取り組む必要がある」と指摘し、今年度中に各業種の代表者や専門家とともに中心市街地活性化の方向性を改めて検討する方針を示しました。

百貨店の閉店は業績の悪化や設備の老朽化などを背景に全国で相次いでいます。
ことし1月、松江市にある島根県唯一の百貨店「一畑百貨店」が大型ショッピングセンターの進出やコロナ禍による業績悪化の影響を受けて、60年余りの歴史に幕を下ろしました。
また、ことし7月には岐阜県内唯一の百貨店「高島屋岐阜店」が設備の老朽化や経営不振を理由に閉店を予定しています。
「日本百貨店協会」によりますと、全国の百貨店の数は、25年前のピーク時に311店を数えましたが、ことし2月の時点で177店と、4割ほど減っているということです。