JR東海 リニア27年開業を断念 中間駅建設予定飯田市では

飯田市に中間駅が設置される「リニア中央新幹線」について、JR東海は、国の専門家の会議で、目指してきた2027年の開業を断念する方針を明らかにしました。
静岡県が着工を認めおらず、会社では静岡での工事には10年程度かかるとしていて、仮に今すぐ着工できたとしても開業は2034年以降になる計算です。

リニア中央新幹線は、飯田市にも中間駅が設置される計画で、東京・品川と名古屋を結ぶ区間の2027年の開業を目指していました。
しかし、静岡県が環境に対する影響が懸念されるなどとして着工を認めていないため、JR東海は、去年12月に、開業時期を「2027年以降」に修正していました。
こうした中、JR東海の丹羽俊介社長は29日国土交通省で開かれた専門家の会議の中で、「2027年の名古屋までの開業は実現できる状況にはない」と述べ、2027年の開業を断念する方針を明らかにしました。
静岡での工事に着手できないまま、工事契約の締結から6年4か月が経過しているためだとしています。
会社では工期の短縮は難しく、静岡での工事には10年程度かかるとしていて、仮に今すぐ着工できたとしても開業は2034年以降になる計算です。
会議のあと、取材に応じた丹羽社長は、「1日でも早く着工できるよう全力を尽くしたい。地域の方々の理解を得られるように双方向のコミュニケーションを大切に真摯に取り組んでいく」と述べました。


JR東海が2027年の開業を断念する方針を示したことに対して、中間駅が建設される飯田市に住む人たちからは、落胆の声などが聞かれました。
10代の女性は、「いつ開業するのかとても気になっていたし、友達とも乗りたいと話していたので残念です。リニアが開業すれば飯田に多くの人が来ると聞いているので、早く開業してほしいです」と話していました。
また、70代の男性は、「とても残念です。開業に向けて国がもう少し先導して話を進めてほしいです。飯田は陸の孤島ともいわれ、県内でも発展が遅いので早く開通して東京や名古屋に行けるようになってほしいです」と話していました。


JR東海がリニア中央新幹線の2027年の開業を断念する方針を示したことに対して中間駅が建設される飯田市の佐藤健市長は、「これまでも2027年の開業は難しいことが示唆されてきたので、冷静に受け止めているが、資料などによると開業までに少なくても10年はかかるということで、まだ、長い期間がかかるのだと感じた」と述べました。
2027年の完成を目指して市が進めている駅周辺の整備については、「県内のリニアの工事スケジュールを聞いた上でスケジュールが変わればその内容によって、計画も見直さなければならない」と述べて、リニアに伴うまちづくりを再検討する必要も出てくるという考えを示しました。

県リニア整備推進局によりますと県内を走るのは東京・品川から名古屋までの285キロ余りの区間のうち2割近くの52キロ余りです。
ルートに入る県内の6市町村は、大鹿村、豊丘村、喬木村、飯田市、阿智村、南木曽町です。
ルートは、静岡市から南アルプスを通り、県内の6つの市町村や中央アルプスをへて岐阜県中津川市に抜けるもので、9割以上はトンネルです。
6つの市町村では、県などが用地取得を進め、おととしから始まった飯田市での駅の建設や、トンネルの掘削などが当初開業を予定していた2027年度の前の、2026年度末に終える予定で進められてきました。
また県は、開業の効果を地域振興に生かそうと、新たな駅の周辺のアクセス向上のために道路の整備を進めているほか、駅近郊の下伊那地域北部の土地を市町村の枠を越えて広域的に利用する計画で、費用1400万円余りを新年度の当初予算に計上しています。