長野のカップルら提訴 “夫婦別姓を認めない規定は憲法違反”

夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法に違反するとして、長野県などに住む12人が国に賠償などを求める訴えを起こしました。
同じ規定について最高裁判所大法廷は2度にわたり合憲と判断していますが、原告は「夫婦どちらかが名字を捨てなければ結婚できない理不尽な制度を変えたい」と訴えています。

訴えを起こしたのは、長野や東京、北海道などに住む事実婚のカップル5組と夫婦1組のあわせて12人です。
12人は8日、夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定について「婚姻の自由を保障した憲法に違反し、無効だ」などとして国に賠償などを求め、東京と札幌の地方裁判所に訴状を提出しました。
12人と弁護団は、▽結婚して名字が変わると旧姓にひも付いていた信用や評価を維持することが難しくなるほか、アイデンティティーの喪失を感じる人も少なくないと主張しています。
また▽結婚を諦め事実婚を選んだ夫婦も、相続で不利になるなど結婚した夫婦との違いがさまざまな場面であり、常に不安を抱えているとしています。
同じ規定をめぐっては、2015年と2021年の2度にわたり最高裁判所の裁判官15人全員が参加する大法廷で審理され、いずれも多数意見で「憲法に違反しない」という判断が示されましたが、「憲法に違反する」と判断した裁判官も2015年は5人、2021年は4人いました。


8日の提訴に長野県から参加した60代と50代の事実婚のカップルは「自分たちだけでなく若い世代にも夫婦別姓の選択の機会を与えてほしい」と訴えています。

原告のうち箕輪町に住む小池幸夫さん(66)と内山由香里さん(56)は、およそ30年前から一緒に暮らしています。
内山さんは、生まれ育った姓とは違う姓で呼ばれることに違和感を覚え、小池さんと相談のうえ事実婚の道を選びました。
これまでに20代から30代の3人の子どもに恵まれましたが、結婚せずに生まれた子どもは「婚外子」となるため、妊娠・出産のたびに結婚と離婚を繰り返してきました。
3人目の子どもが生まれたあとは、しばらく籍を入れたままにしていましたが、内山さんが仕事で海外に行く際、パスポートが戸籍名の「小池」となってしまうことに支障を感じて再び離婚し、その後は事実婚の状態を続けているということです。

内山さんは「通称の使用は広がってきていますが、一緒に暮らし始めて30年以上たつ今も状況は全く変わっていません。法制化が実現し夫婦別姓を選べるということだけで幸せになる人が増えるのではないかと思います」と話していました。
また、小池さんは、「自分たちももちろんですが、これからの若い世代に夫婦別姓の選択の機会を与えてほしい。判決を待たずに国会が法改正に動いてほしいです」と話していました。