長野刑務所 収容の男性 低体温症で凍死か 管理体制など調べ

去年10月須坂市にある長野刑務所で収容されていた60代の男性が死亡し、司法解剖の結果、低体温症で凍死した疑いが強いことが捜査関係者への取材で分かりました。
長野刑務所は当初、「病死とみられる」と説明していて、警察などは刑務所の管理体制に問題がなかったかなど調べを進めています。

長野刑務所は去年10月30日、1人部屋に収容されていた60代の男性が死亡したと発表し、男性に複数の持病があったことなどを理由に、「病死とみられる」と説明していました。
しかし明確な死因が分からなかったため、警察などが遺体を司法解剖した結果、男性は低体温症で凍死した疑いが強いことが捜査関係者への取材で分かりました。
関係者などによりますと、死亡したのは佐久穂町に住んでいた62歳の男性で、人身事故を起こし罰金刑を受けたものの支払えなかったため、刑務所内で軽作業に従事する「労役場留置」で収容されていたということです。
男性には、糖尿病や腎機能の障害など複数の持病があったということですが、刑務所に入る際の医師の検査では直ちに入院の必要はないと判断されていたということです。
警察などは、刑務所の管理体制に問題がなかったかなど調べを進めています。
長野刑務所は、NHKの取材に対し、「捜査を受けているため何も答えることはない」としています。
また、全国の刑務所を管轄する法務省矯正局は「個別の死因は個人の特定につながるので答えは差し控える」としています。
受刑者の支援活動などに取り組むNPO法人「監獄人権センター」の小竹広子弁護士は刑務所に収容されている人が凍死した事例はほとんど聞いたことがないとしたうえで、「刑務所は収容者の命を預かっている場所で、安全に生きることが保証されなければならず、改善策を考えてもらいたい」とコメントしています。

長野刑務所は、去年12月、収容者の寒さ対策に関するNHKの取材に対し、「居室に暖房はついていないが、毛布や布団などは支給している」などと答えていました。
また、法務省矯正局は、先月、刑務所ごとの対策については答えられないとした上で、「一般的には、それぞれの刑務所の判断で、気温が低くなる時期には収容者に貸し出す衣類の数を増やすなど寒さ対策に努めている。高齢者などは状況に応じてエアコンが設置された部屋に収容するなどの処置をしている」と回答しました。
一方、長野刑務所の受刑者の1人は、弁護士に宛てた手紙の中で「居室に暖房はなく冬場は吐く息が白くなるほど寒い。ストーブは扉を隔てた廊下に1台あるだけで、着る物も暖かくない」などと厳しい環境であることを証言しています。

長野刑務所によりますと、死亡した男性は単独室と呼ばれる1人部屋に収容されていましたが、去年10月30日の午前6時40分ごろ、起床の合図で起きてこなかったため、職員が声をかけたところ、すでに意識がなかったということです。
男性は救命措置を受けたあと病院に搬送されましたが、およそ1時間後に死亡が確認されたということです。
この部屋の見回りは20分おきに行われていたということで、長野刑務所は午前6時24分ごろには男性が寝た状態で呼吸をしているのを職員が確認していたと説明しています。