「身寄り」問題 関係団体が連携 支援のあり方検討会議

家族や親族がおらず、いても交流がないなどの「身寄り」のない人が、賃貸住宅を契約したり介護が必要になったりした時に、関係団体が連携して支援するためのあり方を検討する会議が、長野市で開かれました。
身寄りの問題について県内の関係団体が集まるのは初めてで、今後も定期的に意見交換などを行って具体策を探ることにしています。

「身寄り」のない単身の高齢者や家族と死別した人などは、保証人がいないことで賃貸住宅の契約ができなかったり、福祉施設の入所を断られたりすることが課題となっています。
このため、県内の関係団体が連携して課題の解決に向けた基盤をつくろうと、医師会や弁護士会、それに介護福祉士会などによる推進会議を立ち上げ、24日、初会合を開きました。
はじめに、日本福祉大学の藤森克彦教授が講演し、「医療や看護、介護などのサービスはあるが、制度があっても関係団体とつながれず、『身寄り』のない人が制度を利用できない問題が起きているので、解決することが必要だ」と指摘しました。
このあと出席者が意見を交わし、「入院時にどういう治療をするか、本人に代わって回答を求められるなど対応に悩むケースが多い。『身寄り』のない人が契約や解約などをする際に役割の違う業種で連携できたらいい」とか、「夫婦やきょうだいと暮らしていて、急に1人になる事例が最近になって多い。元気なうちに、『身寄り』がなくなった時にどうしたらいいか、誰かに伝えることが必要だ」などといった意見が出ていました。
関係団体は、定期的に意見交換などを行って、具体的な連携のあり方を探ることにしています。
参加した医療ソーシャルワーカーの男性は「待ったなしの課題だ。治療はできるとしてもそのあとの行き先に困ることが起きている。知恵を借りながら引き続き業務にあたりたい」と話していました。
また、社会福祉士の女性は、「課題の共有ができた。今後も新たな気づきやもっと深めたいことが出てくると思うので、全県に向けて発信していきたい」と話していました。

「身寄り」の問題は、核家族化や未婚率の高まりなどで単身の高齢者や家族と死別した人などが増えるなか、家族による支援を前提とした従来からの社会の構造によって起きている問題です。
県社会福祉協議会などによりますと、▽連帯保証人がいないことで賃貸住宅の契約ができなかったり、▽身元引受人がいないため、福祉施設への入所を断られたりすることがあるといいます。
また、▽葬儀や遺品の処分などは主に行政機関が行っていますが、対応に困ることもあるといいます。
2020年の国勢調査に基づく県内の高齢単身世帯は9万6000人余りで、65歳以上の高齢者がいる世帯の23.8%を占めています。
また、国立社会保障・人口問題研究所は、この割合は今後も増加し、2040年には12万7000人余りになると推計しています。
65歳以上の高齢者がいる世帯の34.7%に上る見通しです。
身寄りの問題に詳しい日本福祉大学の藤森克彦教授は、「地域でさまざまな医療機関や介護関係の機関、日常生活を行う機関などが集まって、顔の見える関係を作り、サービスを提供していきながらネットワークを組んでいくことが必要だ」と指摘しています。
また、高齢者自身についても「人生の最終段階でいろいろなことが起きるので、自分が、どんな人生の最終段階を送りたいのか元気なうちから考え、可能であれば自分以外の方と共有してほしい」と話していました。