「放課後等デイサービス」で不正受給疑い 長野市が刑事告訴

長野市は、放課後などに障害のある子どもを受け入れる「放課後等デイサービス」の事業所を運営する会社の経営者が給付費およそ1億7600万円を市から不正に受け取ったとして、詐欺の疑いで長野地方検察庁に刑事告訴しました。

長野市が刑事告訴したのは、放課後や休日に障害がある子どもを受け入れ、自立に必要な力を養う、「放課後等デイサービス」の事業所を経営する会社「きらっと」の成田憲彰代表取締役です。
長野市によりますと、この経営者は、3年前から長野市で3つの事業所を運営していましたが、市から指定を受ける際、保育士などを2人配置する必要があるにもかかわらず、勤務の予定がない保育士を配置したと記載して虚偽の申請をしていたということです。
そのうえで、運営にかかる給付費およそ1億7600万円を不正に受け取ったとして、長野市は、今月22日に詐欺の疑いで長野地方検察庁に経営者を刑事告訴しました。
また、会社に対して、法律に基づいて、7040万円を加算した、合わせて2億4600万円余りを返還するよう請求しました。
長野市障害福祉課の池田匠課長補佐は、「人員の配置基準を理解したうえで指定の申請を行った悪質さを判断して刑事告訴した。今後、事業所を指定する際に現場の確認を徹底するなどして再発防止に努めたい」と話していました。
事業所の経営者は、NHKの取材に対して、「代理人の弁護士にすべての対応を任せているのでコメントは差し控える」と話していました。
一方で、経営者の代理人を務める弁護士は、「刑事告訴については、疑問を感じている。給付費の返還については不服申し立ての請求を行うなど必要な対応をとりたい」と話していました。

一方、県は、この経営者が須坂市で運営する事業所で必要な管理責任者や保育士などを確保できていないのに、配置したように装って指定を受けたとして、事業者の指定を今月30日付けで取り消すと発表しました。
県によりますと、県内で、「放課後等デイサービス」の事業者の指定を取り消すのは、初めてだということです。
県は、再発防止策として、申請書類に記載されている人が、実際に勤務する予定か確認するほか、指定後の早い時期に実地調査を行い、職員の配置状況などを確認することにしています。
県障がい者支援課は、「大変重く受け止めている。利用者にも影響があり申し訳なく思っている。しっかり対策を行って再発防止に努めていく」としています。
県は、このほか、岡谷市と辰野町で放課後等デイサービスなどの事業を行う合同会社についても、同様の不正があったとして27日付けで指定を取り消しました。

「放課後等デイサービス」は、児童福祉法に基づき、障害のある、原則、小学生から高校生までを放課後や休日に受け入れる福祉サービスです。
自立した日常生活を送るのに必要な支援などを民間の施設が行っていて、長野市によりますと今月1日時点で市内に53か所あるということです。
障害のある子どもの支援に詳しい立命館大学の田村和宏教授は、「福祉に民間企業が参入することで事業所が増えた一方で、どのようにサービスの質を高めるのかが課題となっている。事業所の管理者に対して研修の実施や免許を交付することも必要なのではないか」と指摘しています。
また、対象の事業所の利用者については「子どもたちが安心して生活できるように、行政が関係機関と調整して今後の放課後の活動を保障することが大事だ」と話していました。