リニア認可取消請求訴訟 住民の訴え退ける 東京地裁

東京・品川と名古屋を結ぶリニア中央新幹線の計画に反対する住民が、「安全性などの問題や環境に悪影響を与えるおそれがある」などと主張して国の認可を取り消すよう求めた裁判で、東京地方裁判所は「国の判断は著しく妥当性を欠くとまでは言えず、違法ではない」と指摘して住民側の訴えを退けました。

リニア中央新幹線は、JR東海が2027年に東京・品川と名古屋の間での開業を目指していて、国が工事実施計画を認可しました。
これについて、沿線の1都6県の住民などが「安全性などの問題や環境に悪影響を与えるおそれがあり、国の認可は違法だ」と主張して認可を取り消すよう求めていました。
18日の判決で、東京地方裁判所の市原義孝裁判長は、安全性や環境面を含む住民側の主張をいずれも認めず、「国の判断が社会一般の常識に照らして著しく妥当性を欠くとまでは言えず、違法ではない」と指摘して訴えを退けました。
裁判は当初700人余りが原告となっていましたが、裁判を争う法的な資格があるかどうかについて先行して判断が示され、18日は資格があるとされた240人余りに判決が言い渡されました。
また、7年に及ぶ審理では、裁判官による山梨県での現地視察も行われていました。
リニア中央新幹線は4年後の開業を目指して工事が進められていますが、静岡県が県内での着工を認めておらず、計画どおりの開業は難しくなっています。

判決のあとの記者会見で、住民側の代表を務める川村晃生さんは「7年に渡って主張してきた環境への影響や、鉄道事業の根源的な問題について裁判所がくみ取らなかったことに憤りを感じる」と話しました。
また、「裁判官は現地で住民の声を直接聞いたにもかかわらず、判決に生かされなかったことは不当だ。2審で闘っていきたい」として控訴する考えを明らかにしました。
一方、国土交通省は「係争中の案件のためコメントを控える」としています。
また、国の申し立てに基づき「参加人」という立場で裁判に加わったJR東海は、「適切に判断いただいたと理解している。引き続き着実に工事を進めていきたい」とコメントしています。

長野県では、リニア関連工事として、飯田市で県内唯一の駅の建設が進められているほか、大鹿村や豊丘村などあわせて5つの町村でトンネルの掘削などが行われています。
今回の裁判に、県内からは飯田市と大鹿村、それに豊丘村に住む、あわせて20人近くが原告として参加しました。
原告の1人で大鹿村の釜沢地区に住む遠野ミドリさん(68)は、およそ40年前にこの土地に移り住みました。
遠野さんの自宅近くには、南アルプスを貫くトンネルの工事現場や掘削作業で出た残土の置き場があり、多くのダンプカーが行き交うようになっています。
遠野さんは「昔、自宅の近くは畑ばかりでしたが、工事で風景は一変しました。生態系も変わってしまうと思うし工事には反対です」と話していました。