長野 佐久の従業員数約100人のIT企業が大幅賃上げ実施へ

物価高への対応や深刻化する人手不足の解消などを目的に、大手を中心とした多くの企業が賃上げに取り組んでいます。
このうち、長野県佐久市の中小企業は、リモートワークの普及に伴うオフィスの縮小などでコストを削減し、その分、大幅な賃上げに踏み切ろうとしています。

長野県佐久市でアプリ開発などを手がける従業員数およそ100人のIT企業では、ことし6月、5000円のベースアップを含め月額平均1万2000円ほどの賃上げを実施する予定です。
記録的な物価高への対応や激しさを増すデジタル人材の獲得競争を有利に進めることが狙いで、ベースアップはおよそ15年ぶり、上げ幅は過去最高だということです。
前例のない賃上げを可能にしたのが、ここ数年にわたる大幅なコスト削減の取り組みです。
この会社は、新型コロナによるリモートワークの普及を受けて、3年前にビルのワンフロアを借り切っていた東京支店を、およそ20分の1の広さのレンタルオフィスに移転しました。
これによって東京支店の年間の維持費は移転前に比べて700万円あまり削減できました。
さらに在宅勤務を増やす一方出張や会議を減らすなど業務の効率化を進めることで賃上げの原資を捻出し、同時に勤務のフレックス化や時短にもつなげたということです。
佐久市の本社に勤務する28歳の女性社員は、「物価高が生活を直撃していたので、賃上げはありがたくさらにがんばりたい」と話していました。
この会社の井上隆社長は「子どもがいる社員を中心に、物価高で生活が大変だという声は届いていた。会社にとっては人材が命で、優秀な人材確保のためにも賃上げを実施する。今後は賃上げだけではなく、職場環境の改善などにも並行して取り組みたい」と話していました。
賃上げの動きは長野県内でも企業の規模を問わず広がりつつあります。
民間の信用調査会社「帝国データバンク」がことし1月、県内273社から回答を得たアンケート調査では、今年度、賃上げを見込む企業が61%あまりに達し、過去3番目の高水準となっています。
賃上げの理由としておよそ80%の企業が「労働力の定着・確保」を挙げていて、深刻化する人手不足を解消するためにも、待遇の見直しをはかる企業が増えている現状が伺えます。