県内ことしのクマ被害39人 半数以上が人の生活圏で襲われる

岩手県によりますと、ことしクマの被害にあった人は26日までに39人で、このうち半数以上の20人が人の生活圏で襲われています。
専門家は「ここ数年、クマの生息域が人の生活圏に近づいているとみられ、山に入る人以外もクマに遭遇したときの対応を改めて確認してほしい」と呼びかけています。

岩手県のまとめによりますと、ことし4月以降、県内で26日までにクマの被害にあった人は39人にのぼり、記録が残る1995年度以降、最悪となっていて、このうち2人が死亡、19人が重傷を負いました。

発生場所をみると、「山」で襲われた人が19人、49パーセントだったのに対し、人の生活圏である「里」で襲われた人は20人、51パーセントと半数以上にのぼりました。

県に記録が残っている1993年度から2020年度までのおよそ30年の被害の発生場所を分析したところ、「山」が67パーセント、「里」が32パーセント、「不明」が1パーセントとなっていて、これまでの傾向よりもことしは「里」で襲われるケースが多くなっています。

クマの生態に詳しい岩手大学の山内貴義准教授は「かつての被害は山がほとんどだったが、ここ数年、里が多い傾向にあり、クマの生息域そのものが里に近づいているとみられる」としたうえで、「山に入る際には鈴やクマよけのスプレーを持つなど対策を徹底するとともに、山に入らない人もクマに遭遇したら大声を出したり背中を向けて走ったりせず、落ち着いて距離を取るなど対応を改めて確認してほしい」と呼びかけています。

また、来年以降も人の生活圏でのクマの出没が増える可能性があるとして、「電気柵を設けたり、草刈りをして山と里の境界線をはっきりさせたりするなど、今のうちから行政と住民が一体となって長期的な環境整備を進めていく必要がある」と話しています。