過労死の遺族訴え 宮崎交通に3570万円の支払い命じる

宮崎交通から同じグループ会社に出向中に過労死した男性の遺族が、宮崎交通に損害賠償を求めた裁判が行われ、宮崎地方裁判所は「被告は業務時間や業務内容の軽減を行うべき義務を怠った」などとして3570万円あまりの支払いを命じる判決を言い渡しました。

12年前、宮崎交通と同じグループ会社で営業部に所属していた当時37歳の男性が自宅で心停止を発症して死亡し、その5年後、宮崎労働基準監督署が過労死を認めました。

そして妻と子どもの遺族3人が男性の時間外労働が月100時間を超えていたにもかかわらず、会社が適切な対応を怠ったなどとして宮崎交通に対して、あわせて6000万円あまりの損害賠償を求め、訴えを起こしていました。

これに対して宮崎交通は時間外労働は過労死ラインの月80時間を下回り、男性が死亡したのは基礎疾患によるものだと主張していました。

宮崎地方裁判所で、15日、開かれた裁判で後藤誠裁判長は「男性が亡くなる前の半年間、時間外労働は平均で月56時間に達していて、相当程度の疲労を蓄積させるに足るものであったといえる」と指摘しました。

そのうえで、「被告は業務時間や業務内容の軽減を行う義務を怠り、男性は時間外労働の継続によって強度の精神的・身体的負荷が集中したことで心停止の発症に至った」と述べ、宮崎交通に対して、3570万円あまりの支払いを命じる判決を言い渡しました。

判決を受けて宮崎交通は「内容を精査した上で今後の対応を検討して参ります」とコメントしています。

判決の後、原告の弁護士が記者会見を開き、亡くなった男性の妻のことばを代読しました。

この中で男性の妻は「会社の責任を認めてもらえたことで、本当にほっとしました。裁判長が会社の働かせ方に問題があったことや、夫の健康や命に対する配慮を十分に行っていなかったことを認定し、私たちの訴えを受け止めていただいたと感じました。会社はこの判決を受け止め、働いている社員を大事にしていただきたい」と思いをつづりました。

また、弁護士は「労働時間をしっかり把握していなかったことに対する責任を明記していただき、長期間に渡って適切な対応を行っていなかったことに言及してもらったことは大変意義深い」と話しました。