山形屋 「事業再生ADR」利用 事業継続し経営再建へ

鹿児島市に本社があり、「宮崎山形屋」を展開する老舗デパート「山形屋」は、新型コロナの影響などで厳しい経営が続いているとして、事業を続けながら再建を目指す私的整理の一種、「事業再生ADR」と呼ばれる制度を利用して取引先の金融機関の支援を受けていることを明らかにしました。

山形屋は、1751年に創業した老舗で、山形屋によりますと、大型商業施設の進出に伴う競争の激化や建物の耐震工事などの設備投資に加え新型コロナウイルスの感染拡大の影響が重なりグループを取り巻く環境が急激に悪化し、2018年2月期から6期連続の赤字で負債総額は360億円だということです。

このため、山形屋では収益性の確保や資本の強化が必要だとして、去年12月、事業を続けながら再建を目指す私的整理の一種、「事業再生ADR」と呼ばれる国の制度を第三者機関の団体に申請し、現在、経営の再建を進めているということです。

山形屋は、メインバンクの鹿児島銀行などの金融機関に支援を求め、返済条件を見直して債務の負担軽減を行ったということです。

また、第三者機関が策定している5年間の事業再生計画案では、グループ企業の一部をホールディングスにしたうえでホールディングスの会長と社長の報酬を全額なくすということです。

山形屋では、雇用などへの影響はないとしています。

山形屋と支援する金融機関は今月28日に開かれる会議で、事業再生計画案の内容を確認することにしています。

山形屋は、NHKの取材に対し「メインバンクの支援を頂きながら自主再建に取り組んでまいります。お客様や取引先には影響は及ぼしませんので安心して欲しい」とコメントしています。

老舗デパート「山形屋」の経営再建の動きについて、河野知事は10日夕方、報道陣の取材に対し、「事業継続や雇用に代わりはないと聞いているが、山形屋は中心市街地で重要な役割を果たしている商業施設で引き続きその役割を果たし雇用も維持していただくことを期待したい」と述べました。

山形屋の経営再建を受けて10日、宮崎山形屋の利用客からは心配や応援などさまざま声が上がりました。

娘と買い物に来た55歳の女性は「私からすると高級感のあるお店なので、唯一無二の存在です。祖父母がこのお店をよく利用していて、思い出があります」と話していました。

北海道の物産展を訪れた70歳の女性は「近くにデパートがないと困ります。大切な人に贈り物をするなら山形屋なのでここがなくなったら宮崎県が寂しくなる。頑張ってというしかないです」とエールと送っていました。

また、妻と義理の母親に母の日のプレゼントを買いに来た50歳の男性は「山形屋では結婚指輪を買ったり、時々使わせてもらいました。宮崎の中心市街地のシンボルなので、これからも存在してほしい」と話していました。

「事業再生ADR」は、第三者機関が選んだ弁護士や会計士が企業と金融機関などの債権者との調整を進めて事業再生などを目指す私的整理の一種で、民事再生法や会社更生法といった法的整理とは異なります。

ADRで対象となる債権は、基本的に金融機関のもので、商取引の債権者は含まれないことから、申請したあとも企業と取引先が取り引きを続けることができるメリットがあります。

また、法的整理に近い透明性や公平性を維持しつつ、資金流出のリスクが低いこと、そして金融機関との意見調整も進めやすく、事業再生が迅速に行えるなどの利点もあるとされています。