安保法制違憲訴訟 2審の福岡高裁宮崎支部も住民の訴え退ける

9年前に成立した集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法によって、平和的に生きる権利が侵害されたと鹿児島県の住民が国を訴えた裁判で、2審の福岡高等裁判所宮崎支部は1審と同じく住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

9年前に成立し、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法について、鹿児島県の住民44人は戦争の放棄を定めた憲法9条に違反し、平和的に生きる権利が侵害されたなどと主張して、国に賠償を求める訴えを起こしました。

おととし、1審の鹿児島地方裁判所は憲法判断をしないまま訴えを退け、住民側が控訴していました。

15日の2審の判決で、福岡高等裁判所宮崎支部の西森政一裁判長は「憲法9条は国家の統治機構などについて定めたものであり、国の行為自体を制限する規範であって、個々の国民に平和的生存権という具体的な権利利益を保障したものではない」という判断を示しました。

そのうえで「安全保障関連法の成立は閣議決定、および立法行為であり、それ自体が訴えを起こした住民の生命、身体の安全などに危険をもたらす行為には該当しないし、戦争やテロ攻撃の対象となる現実的な危険が切迫し、具体化したとは認められない」などとして1審と同じく住民側の訴えを退けました。

また、安全保障関連法が憲法に違反するかについて1審に続いて判断を示しませんでした。

裁判のあと、住民側の弁護団は判決を不服として上告する考えを示しました。

安全保障関連法は憲法との適合性をめぐって国会の審議で大きな議論になり、弁護団によりますとこれまでに同様の裁判が全国で25件起こされ、いずれも訴えは退けられています。

裁判のあと、住民側の弁護団の増田博団長は「極めて不当な判決だ。鹿児島の場合は自衛隊基地の増強など危険な状態が発生しているにもかかわらず、具体的な危険性がないということで退けられた点が特に不当だ。上告して違法性を国民に訴えかけ、争っていきたい」と話していました。

また、住民側の1人として裁判に臨んだ70代の女性は「奄美諸島はミサイル基地ができるなどいつでも戦場になりかねない場所になっていると感じる。もっと国民の声を聞いてほしい。きょうはしっかり判断してもらえず悔しい」と話していました。