「特定技能」在留資格の外国人 宮崎と群馬の産地間活用へ協定
農業の担い手を確保する新たな取り組みです。
「特定技能」と呼ばれる在留資格の外国人に、繁忙期が冬場の宮崎県と夏場の群馬県の農家で交互に働いてもらおうと、2つの産地と人材サービス会社が協定を結びました。
協定を結んだのは、宮崎県農業法人経営者協会と群馬県の嬬恋キャベツ振興事業協同組合、それに大阪府の人材サービス会社、ウイルテックです。
3つの団体の代表者が1日、宮崎市内のホテルに集まり、「特定技能」という在留資格の外国人の受け入れに関する協定書を交わしました。
これに基づき、会社は今後、野菜などのハウス栽培が盛んで冬場に人手が必要となる宮崎県の農業法人と、キャベツの産地で夏場が忙しい群馬県嬬恋村の農家に対し、それぞれの繁忙期に合わせて特定技能の人材を交互に紹介することになりました。
このうち嬬恋村では、これまでにも特定技能の外国人を活用し、キャベツの収穫などを担ってもらっていますが、冬場に仕事がなくなるのが課題でした。
今後、特定技能の人にとっては2つの産地で働くことでほぼ1年を通じて収入を得られる一方、宮崎県の産地側でも繁忙期の人手の確保が期待されます。
県によりますと、こうした協定の締結は県内では初めてだということです。
宮崎県農業法人経営者協会の香川憲一会長は「外国人でも日本人でも、とにかく人手が欲しいのが農家の現状だ。試行錯誤しながら進めたい」と話していました。
嬬恋キャベツ振興事業協同組合の干川秀一理事長は「収穫期は非常に忙しいので、特定技能の人たちには4月から10月までは嬬恋村で大いに健闘し、それ以降は宮崎県でお世話になって頑張ってもらうのが理想的だ」と話していました。
【特定技能とは】
「特定技能」は、農業や介護など人手不足が深刻な業種で外国人材の受け入れを拡大するため、4年前に導入された新たな在留資格です。
宮崎労働局や出入国在留管理庁によりますと、県内では去年の時点で技能実習生を中心におよそ5600人の外国人が働いていますが、このうち800人余りが特定技能の人たちだということです。
日常会話程度の日本語試験と業種ごとの技能試験に合格した人などが特定技能の資格を取得できます。
技能実習を修了した外国人も「特定技能」に移行すれば、農業分野では最長で5年間、日本に滞在して働くことができます。
また、技能実習生と違って、同じ分野であれば転職も認められています。
ただ、企業や農家からすれば、繁忙期の欠かせない人材となっている一方、仕事が少ない時期には働く場を提供できず、一時帰国や転職を求めざるを得ないケースも出ています。
【協定への期待と課題】
人材サービス会社のウイルテックによりますと、今回の協定の枠組みでは、特定技能の人たちにとって働く場所が変わる負担はあるものの、年間を通じて働いて収入を得ることができるのはメリットだということです。
協定では、▽4月から10月までは嬬恋村で、▽11月から3月までは宮崎県内で働いてもらうことが主に想定されています。
宮崎県農業法人経営者協会の香川憲一会長は「目標は農家同士がウィンウィンになることだが、やってみないとどんな問題が発生するかも分からないので、解決策を手探りしていきたい」と話していました。
一方、「特定技能」の制度をめぐっては、外国人の人権が十分に守られるよう運用面を厳しく監視する必要があるという意見も人権団体などから出ています。
今回の協定では、外国人側の意向をきちんと聞きながら、まずは20人前後に2か所の産地で働いてもらうことが想定されています。
働く側を含めて、すべての当事者が恩恵を受けられる仕組みを作っていけるかどうかが成功のカギとなりそうです。