大相撲夏場所 大の里が初優勝 茨城県阿見町の二所ノ関部屋

大相撲夏場所は、千秋楽の26日、茨城県阿見町にある二所ノ関部屋の小結・大の里が、関脇・阿炎に勝利し、初優勝を果たしました。
初土俵から7場所目での初優勝は、幕下付け出しの力士としては最も早い記録となります。

大相撲夏場所の優勝争いは14日目を終えて小結・大の里が3敗で単独トップで、4敗で大関・琴櫻と豊昇龍、関脇・阿炎、平幕の大栄翔のあわせて4人が続いていました。
大の里は26日の千秋楽で関脇の阿炎に押し出しで勝って初優勝を果たしました。
幕下付け出しでデビューした力士のうち初土俵からの優勝がこれまで最も早かったのは元横綱・輪島の15場所目で7場所目の大の里は大幅に記録を更新しました。
また、初土俵から7場所目での初優勝は優勝制度ができた明治42年以降、尊富士の10場所目を抜いて、最も早い記録となりました。
また、元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方が3年前に部屋を設立して以来、弟子の幕内力士が優勝するのは初めてです。

優勝した大の里は目に涙を浮かべながら支度部屋に戻り、「優勝したんだなと実感が沸いた。優勝はずっと意識していた。15日間は長かったが、最高の結果で終われてよかった」と喜びを語りました。
また、前日に師匠で元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方から「これが終わりじゃないぞ」と声をかけられていたことを明かし、「そのことばを聞いて気持ちが楽になった。この一番に集中することができた」と話しました。
そして、「親方の言うことを守って、稽古に精進して上へ上へと頑張りたい」と次の目標を見据えていました。

大の里は優勝インタビューで「初場所と春場所で惜しいところまでいったが、優勝できなかった。初場所から幕内での優勝が夢から目標に変わり、その目標を達成できてうれしい」と喜びを語りました。
また、優勝を決めたあと、土俵下で待っているときの心境については「きのう親方からは優勝しても喜ぶなと言われたので、冷静にということを意識していた」と話していました。
また、「去年、夏場所でデビューして1年後に幕内で優勝することは想像していなかったのでうれしい」と率直な思いを述べました。
そして、ことし1月に能登半島地震で被災した地元の石川県に向けては「優勝する姿を石川県の方に見せられてうれしい」と述べ最後に「強いお相撲さんになっていきたい」と力強く話しました。

【大の里 技能賞と殊勲賞】
大相撲夏場所の三賞選考委員会が開かれ、初優勝を果たした新小結・大の里が技能賞と殊勲賞を受賞しました。
夏場所の三賞選考委員会はきょう、東京・両国の国技館で開かれ、初優勝を果たした大の里が技能賞を受賞しました。
大の里は初日に横綱・照ノ富士を破るなど恵まれた体格を生かして前に出る相撲で12勝3敗の成績を収めました。
技能賞は2場所連続の受賞です。
大の里は優勝の条件を満たしたため、殊勲賞も合わせて受賞しました。
敢闘賞は、新入幕で10勝5敗の成績を収めた欧勝馬が、初めての受賞となりました。

【八角理事長「内容が立派」】
日本相撲協会の八角理事長は初優勝を果たした小結・大の里について「内容が立派だった。ラッキーで勝った優勝ではなかった。これから先もあるわけだから駆け上がってほしい」と絶賛しました。
あえて番付を上げる上での課題を挙げてもらうと、「ひざを鍛えて腰をおろすことだろう。けがしない体を作ってほしい」と期待を込めて話しました。
千秋楽まで優勝争いに絡んだ2人の大関については、「よく最後まで頑張った」とねぎらった上で、「この2人にとっても、大の里は下の力士というより、優勝争いでのライバルだろう」と話していました。

【大の里 優勝の記録は】
新入幕から3場所目での優勝は年6場所制が定着した昭和33年以降では元横綱・佐田の山に並んで2番目に早い記録です。
新三役での優勝は昭和32年夏場所で新小結・安念山、のちの元関脇・羽黒山が優勝して以来、67年ぶりです。
また、元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方が師匠を務める二所ノ関部屋で優勝した力士は初めてです。

【大の里 経歴と持ち味】
大の里は石川県津幡町出身の23歳。
身長1メートル92センチ、体重181キロの恵まれた体を生かした圧力をかけた押し相撲が持ち味です。
相撲の強豪、日体大時代に2年連続で「アマチュア横綱」に輝き、大学卒業後の去年5月の夏場所で幕下10枚目格付け出しとして初土俵を踏みました。
その後、去年の秋場所で新十両への昇進を果たすと、力強い立ち合いから大きな体を生かした押し相撲を持ち味に2場所続けて12勝3敗のふた桁勝利を挙げ、ことしの初場所で新入幕を果たしました。
初土俵から新入幕までは所要4場所と、昭和以降では3番目に並ぶスピード出世でした。
そして新入幕からは2場所続けて11勝4敗の成績で三賞を連続で受賞し、先場所では千秋楽まで優勝争いに加わるなど実力を示していました。
今場所では西の小結に昇進し、幕下付け出しの力士では平成26年の九州場所で関脇に昇進した逸ノ城の所要5場所に次いで昭和以降では2番目に早い所要6場所での新三役昇進を果たしていました。

【大の里 わずかな期間の経験を糧に】
初土俵からわずか7場所目で初優勝を果たした大の里。
スピード出世の中でも1場所1場所の経験を確実に成長つなげたことが最高の結果につながりました。
今場所からようやくちょんまげを結えるようになった23歳、大の里。
学生時代には2年連続でアマチュア横綱に輝くなど、華々しい実績を積んできましたが大相撲の世界では去年5月に初土俵を踏んでからわずか10か月あまり、幕下と十両を2場所ずつ、幕内は3場所目と経験の少なさは否めません。
それでも、その少ない経験を効果的に糧としてきたことが成長につながっています。
新入幕で臨んだ初場所では上位陣の力、そして結びの一番の重みを肌で感じました。
9日目に勝ち越しを決めると、10日目からは場所後に大関昇進を果たす琴櫻、大関・豊昇龍、そして、結びの一番での横綱・照ノ富士と、上位陣との対戦が続きました。
すべてに敗れて3連敗を喫しましたが「後半の三番や結びの一番の雰囲気が全く違うというのが分かった。上位は一番に対する思いが違う。負けを無駄にせず、この経験を来場所に生かしたい」と静かに闘志を燃やしていました。
続く先場所では、その上位陣から相次いで白星を挙げました。
番付も上がり、最初の三役との対戦は9日目、関脇・若元春との一番でした。
立ち合いから力強い当たりで一気に土俵際まで押し込むと左を差されながらも休まず攻め続け、実力者を圧倒。
三役から初白星を挙げました。
「先場所よりは成長できている」と手応えを口にすると、11日目には結びの一番で大関・貴景勝に押し出しで勝って今度は大関からの初白星。
初場所ではね返された壁を乗り越え、最終的には大関2人を含む4人の役力士から白星を挙げました。
一方で、わずかに届かなかったのが優勝です。
千秋楽まで優勝の可能性は残っていましたが、初日から11連勝と快進撃を続けた尊富士が110年ぶりの新入幕優勝を果たした。
「優勝したかったのが率直な思い。支度部屋でバンザイを尊富士関がやると思うと悔しい」と心の内を明かしていました。
そして、迎えた今場所。
西の小結の地位で臨んだ大の里は初日、いきなり横綱・照ノ富士との一番が組まれました。
初場所では力負けした相手ですが、立ち合い、胸から強く当たりにいくと、ここから成長を見せました。
すぐに右を差すと、もろ差しの形をつくり、完全に自分優位とすると少しずつ寄っていき、照ノ富士に投げを許さず、最後は「すくい投げ」で快勝。
2回目の対戦で横綱戦初白星を挙げ、「納得できる相撲ができてよかった。前回の対戦はめちゃくちゃ当たって走ることだけを考えていたが、それではだめだと自分なりに考えて相撲を取ってよかった」と手応えを口にしました。
師匠で元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方はこの一番について「本場所の一番は稽古場の千番、一万番くらいの価値がある」と大の里が積んでいる経験の大きさを表現します。
上位総当たりの地位ながらその後も白星を積み重ね、大関の2人、霧島と琴櫻からも初白星を挙げると、14日目を終えてついに優勝争いの単独トップに立ちました。
上位陣の力を実感した初場所、そして優勝を逃すくやしさを味わった春場所。
期待の若手は濃密な経験を力に変えて初土俵からわずか7場所目で憧れの賜杯を手にしました。