東海村の障害者支援施設で”虐待” 茨城県「指定停止処分」に

茨城県東海村にある障害者の支援施設などで職員が利用者に暴力をふるったり、現金をだまし取ったりした虐待があったとして、県は17日、施設に対して給付金が支払われなくなる「指定停止処分」を行いました。
施設側は「事実関係が異なり今後の方針を検討する」とコメントしています。

処分されたのは、東海村にある障害者支援施設とグループホーム、「第二幸の実園」です。
県は3年前、施設関係者からの通報を受けて、立ち入り調査などを行い2008年から2021年にかけての期間の実態把握を行った結果、障害者支援施設では、職員が利用者に暴力を振るったり、利用者の承諾を得ずに就労支援外作業の朝市に参加させたりしたほか、職員が利用者9人の預かり金からあわせておよそ250万円をだまし取るなど14件の身体的虐待や経済的虐待が確認されたということです。
また、グループホームでは、承諾を得ることなく、利用者4人からあわせて87万円を徴収し、理事長の所有する建物にヒノキ風呂を設置する費用に充てるなど5件の経済的虐待が確認されたということです。
県は、代表者である理事長の関与や虐待の継続性を踏まえ、処分を判断したとしています。
県の処分では、支援施設とグループホームのサービス事業者としての指定をことし8月から3か月間、停止します。
指定が停止されても事業を行うことはできますが、サービス利用費の本人負担が原則1割で済むように国や自治体から給付されている「自立支援給付費」が支払われなくなり、利用者の負担が増す可能性もあります。
支援施設には49人、グループホームには4人が入所していて、県は、利用者や保護者の意向を確認し、処分期間中にほかの施設に移ってもらうなど、対応を検討するということです。
県障害福祉課の森田教司課長は「虐待は決して許されるものではなく障害者施設で行われたことは誠に遺憾だ。今回の処分を踏まえて再発防止や運営を改善してほしい。県としては改善状況を確認していく」と話していました。
一方、施設を運営する社会福祉法人愛信会は去年5月、県に対して、処分を差し止めるよう求める裁判を起こしています。

茨城県は東海村にある「第二幸の実園」を、2006年にグループホームとして、2008年に障害者支援施設として、それぞれ指定しました。
2020年4月、県は虐待に関する匿名の通報があったという東海村からの報告を受け、実態を調べるため6月から監査を始め、施設の立ち入り調査を3回行いました。
その際には虐待の事実は確認されず、2021年1月、県は通報があったことを踏まえて、支援方法の検証と見直しを行うよう文書で指導しました。
ただ、今度は施設の関係者から再度、通報が県に寄せられたため、県は2021年9月から監査を行い、立ち入り調査を6回行うなどして2008年から2021年までの期間、虐待があったかどうか実態把握を進めていました。

複数の施設関係者が実態についてNHKの取材に応じました。
利用者の承諾を得ず、就労支援外作業の朝市に参加させていたことについては、「本来、働く日ではない土曜に無償で手伝わされていた。利用者は3時45分集合のため、もっと早く起きなければならず、行きたくないという利用者もいたが、選択権は無く、事実上、強制だった」と話してしていました。
また、経済的な虐待については、「ヒノキ風呂の費用や、クリスマスの献金など、利用者の許諾を得ず金を徴収していて、おかしいと思っていた」と話していました。
その上で、「施設の利用者は障害があり、自分たちで声を上げることもできないし、逃げ場所もない。こうしたことが長年放置されていたことが恐ろしく、利用者を尊重しない施設のままではいけない」と訴えました。

法人の代理人弁護士は、「事実関係が異なり、理由の不記載など大いに問題があり、今後の方針を検討しています。処分は『指定の取り消し』ではなく、事業所の運営になんら問題はございません。すべての事業所について通常運営を継続します」とコメントしています。