ひたちなか海浜鉄道 海浜公園南口に新駅で先行開業へ 茨城

茨城県ひたちなか市の第三セクター、ひたちなか海浜鉄道は着工が延期されていた延伸計画について工事を2段階に分け、国営ひたち海浜公園の南口付近に新駅を整備し、先行開業する方針を固めました。
県が新たな工業団地の開発を進める中、通勤需要も取り込もうというもので、今後、国に工事の許可を求める申請を出し、着工してから早ければ5年後の完成を目指しています。

ひたちなか市の第三セクター、ひたちなか海浜鉄道・湊線は、いまの終点の阿字ヶ浦駅から3.1キロを延伸する計画で、おととし1月に国から許可を受けました。
一方、新型コロナによる需要低迷や物価高騰による建設費の増加などを受け、会社では2年連続で国への工事許可申請を延期し、計画自体の見直しを進めていました。
関係者によりますと、検討の結果、会社では、工事を2段階に分け、まずは海浜公園の南口付近に新駅を整備し、1.4キロの区間を先行して開業する方針を固めたということです。
海浜公園の南口付近では、県が企業誘致を進めるため新たな工業団地の開発を進めているほか、大手企業が半導体関連工場の建設を進めていて、観光だけでなく通勤需要も取り込めると判断したものと見られます。
そして、第2期として当初の計画にあった海浜公園西口付近までの1.7キロの区間を整備する方針です。
今年度中に国に工事の許可を求める申請を出したうえで、海浜公園の南口付近までの区間は着工してから早ければ5年後の完成を目指しています。
地方鉄道で9割近くが赤字となるなど、厳しい経営環境が続く中、延伸計画は極めて珍しく計画の修正によって実現に向けた動きが進むか注目されます。

【地方鉄道で延伸は異例】
厳しい経営状況が続く地方鉄道で、延伸は極めて珍しい動きとなります。

国土交通省が中小の民間鉄道や第三セクターの経営状況をまとめたところ、昨年度は全国の95社のうち85社で、鉄道や軌道事業が赤字になっていて、令和元年度の74社と比べて増加しています。
また、JR東日本では、昨年度、利用が特に少ない62区間で赤字が648億円になると発表しているほか、JR西日本では広島県と岡山県を結ぶ芸備線の一部区間について、ことし施行された法律に基づき路線の存続やバスへの転換などを議論する協議会の設置が調整されています。
直近では新型コロナによる需要の落ち込みも大きいものの少子高齢化や人口減少によって地方の公共交通は苦境に立たされいて、ことし3月には北海道でJR留萌線の一部区間が廃止されたほか、来年3月にはJR根室線の一部区間が廃止されることになっていて、地方路線の廃止が相次いでいます。
こうした中、地方鉄道の延伸は国土交通省に記録の残る平成5年度以降では、路面電車やモノレールなどを除けば例がないと見られます。