防災拠点が大雨で浸水 茨城 日立市役所で何が

9月8日からの記録的な大雨で、茨城県日立市では災害対応にあたる中枢の市役所が浸水する被害を受けました。
この市役所は東日本大震災で被災したため新設され、2017年から利用開始し「防災拠点機能の充実」が基本方針の一つでした。
市役所がどのような状況に置かれていたのか取材しました。

(NHK日立支局 相野台弘記者 NHK水戸放送局 國友真理子記者・小野田明記者)

【切迫する市役所】
9月8日の午後6時半頃、日立市役所の4階にいたNHK日立支局の記者が当時の状況を捉えました。

(相野台弘 記者)
「市役所の前にある川が雨であふれ出て水が敷地内に流れ込んでいます。」

ごう音とともに茶色く濁った水が市役所の敷地内に流れ込みます。
さらに庁舎内では、火災報知器の誤作動でサイレンが鳴り響きました。
川からあふれた水は、庁舎の地下へと流れ込み、地下にあった電源設備が水に浸かって一時、停電しました。 

(國友真理子 記者)
「日立市役所です。建物の電気は消えていますが中で懐中電灯の明かりが動いています。」

こうした中、災害対策本部は市役所から消防本部へと移されました。

【必死の復旧作業】
川の水位が下がった午後8時ごろ。復旧に向けて、市役所の職員はバケツリレーで泥水を取り出し、消防のポンプ車による排水も行われました。作業は翌日の9日も続けられ、10日に本格的な業務の再開にこぎ着けました。

【なぜ浸水?川との位置関係】
なぜ庁舎への浸水が起きたのか。
今回の大雨であふれたのが市役所の西側から流れている川です。山から流れるこの川は、市役所近くで別の川と合流し、地下排水路に流れ込んでいます。この川の水があふれ、市役所の西側から浸水していきました。

【市民の証言】
当時の状況について、市役所周辺の市民からは、夜にかけて短時間のうちに水が一気に増していったと証言が相次ぎました。

(日立市民の男性)
「道路が川になってきたなと思ったら、もうあっという間でした。午後7時頃には泥だらけになっていました。」

(日立市民の男性)
「道路が泥の川でした。流木も流れていました。水の勢いは、子どもだったら溺れてしまうし、大人でも歩けなかったと思います。」

中には不安の声もありました。

(日立市民の男性)
「市役所に何人かは残っていて、電話は通じました。ただ、対策本部が消防本部の方に移ったことは、私は全然知りませんでした。市役所が浸水してしまうなら、そこに避難することもできないですよね。誰のための市庁舎を作ったのかと思いますよ。」

【日立市役所とは】
12年半前の東日本大震災で震度6強を観測した日立市。いまの市役所は震災で旧庁舎が被災したことをうけ、防災拠点機能の充実などを掲げて建て替えられ、2017年から使われていました。

今回の被害について日立市の小川春樹市長は「構造上の課題もあった」として、検証して対策を進める考えを示しました。

(小川春樹日立市長)
「東日本大震災を経験して、しっかりとした庁舎を作ったはずだが、地下に流入してきた水は防ぎようがなかった状況があった。そういった点の構造上も含めて、課題があったと思う。市民のよりどころである市役所がこういう事態になったということについては、よく検証してそういうことがないように今後対策をしっかり取らなければいけない。」