「布川事件」再審で無罪確定の桜井昌司さん 死去 76歳

56年前の昭和42年に茨城県で起きたいわゆる「布川事件」の再審=やり直しの裁判で無罪が確定し、えん罪事件を無くすための活動を続けてきた桜井昌司さんが、23日午前、病院で直腸がんのため亡くなりました。
76歳でした。

桜井さんは昭和42年、茨城県利根町布川で男性が殺害され現金を奪われたいわゆる「布川事件」で無期懲役の判決を受け、44年後の平成23年に再審=やり直しの裁判で無罪が確定しました。
この事件の捜査をめぐり、自白を強要されたなどと桜井さんが訴えていた裁判で、東京高等裁判所は2年前の令和3年、取り調べの違法性を認め、国と茨城県に7400万円余りの賠償を命じ、その後、確定していました。
桜井さんは、えん罪被害者を支援する団体「冤罪犠牲者の会」を立ち上げたり、再審に関する法律を改正するよう集会を開くなどえん罪事件を無くすための活動を続けてきました。
桜井さんの妻によりますと、4年前に直腸がんが分かり、最近は寝たきりになっていましたが今月に入り入院し、23日午前10時半ごろ水戸市内の病院で直腸がんのため亡くなりました。
76歳でした。
桜井さんの妻は「夫は『再審法の改正を実現させたい』と言いながら活動していたが、あと少しのところで亡くなってしまった。えん罪被害を支援する活動などで、やっと最近、社会が再審法の改正に共感するようになってきた。最後の最後まで戦い切ったと思う」と話しています。

桜井昌司さんは、57年前に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)の支援にも長年、取り組んできました。
袴田さんの再審=裁判のやり直しを実現させようと、去年12月に東京都内で開かれた集会で、桜井さんは「命ある限りえん罪の仲間と声をあげ、再審に関する法律を変えていきたい。袴田さんの喜びの涙を一緒に見られるまで力を貸して下さい」と呼びかけました。
桜井さんが亡くなったことについて、20年以上の交流があるという袴田さんの姉のひで子さん(90)は、「元気なときの姿を知っていますし、活動に復帰すると言っていたので、亡くなったことが信じられず、本当に残念です」と述べました。
その上で、「再審法の改正を目指していた桜井さんの意志を私たちが引き継いで頑張っていくしかない。今はゆっくりと休んでほしいです」と話していました。