感染症流行 小児専用ICUがひっ迫

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、「5類」に移行してから1か月余りがすぎ、社会は以前のような日常を取り戻し始めています。
そんななか、茨城県内の小児医療の現場では、さまざまな感染症が同時にはやり、重症化する子どもたちが増えているところもあります。
危機感を募らせる医療の現場を取材しました。

(水戸放送局記者 藤田梨佳子)
【さまざまな感染症が同時流行】
水戸市にある県立こども病院は、子どもたちを専門に治療している医療機関です。
この病院の本山景一医師によると、入院する子どもたちのなかでは、新型コロナウイルスを含む、さまざまな感染症にかかっているケースが多くなっているということです。
(県立子ども病院本山景一医師)
「5類に移行してから、新型コロナウイルス、RSウイルスであるとか、夏風邪のエンテロウイルス、パラインフルエンザウイルスなど、非常に多くのウイルスが同時にはやっている状況です。」
【県内全体でも増加】
茨城県に6月18日までの1週間に報告のあった子どもたちの感染者数のデータを見てみます。
新型コロナの感染拡大前の4年前(2019年)の同じ時期と比較すると、「インフルエンザ」はおよそ33倍、呼吸器の感染症である「RSウイルス」は5倍、乳幼児に多く見られる「ヘルパンギーナ」は3倍以上となっています。
【5類移行が増加の背景】
本山医師は、新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行したことが影響しているとみています。
(県立子ども病院本山医師)
「感染症患者の増加は、免疫力が低下したことが原因と言われていますが、そうではなくて、5類移行で多くの子どもたちが外出の機会や、接触する機会が増えたということで、3年間ほとんど新型コロナウイルス以外のウイルスの大きな流行、コロナ以外のものが起きずにいた。急にあらゆる感染症に接する状態になって複数のウイルスに、この期間で順番にかかっていってます。」
【重症化する子どもたち・・】
ICU=集中治療室を担当している本山医師によりますと、感染の急増とともに、重症化する子どもたちも増えているといいます。
この病院では、今月10日までの20日間にICUに入った子どもたちは、去年の同じ時期と比べて3倍に、呼吸が困難になるなど重い症状の子どもたちも2倍以上に増えています。
さらにICUの病床は、6つありますが、そのうちの半数以上が使用される状況が続いていて今後、ほかの病気の治療に影響が出るおそれがあると懸念しています。
(県立子ども病院本山医師)
「ICUでは、本来は感染症に対応した病床ではない病床も使っています。流行の波が、いま以上に大きくなっていくと、心臓の病気のお子さんであるとか、高度な医療が必要な子どもたちにも影響が出てくる可能性がある。今は、影響が出るか出ないかの境目です。」
【限られている小児専用ICU】
県内で重症の子どもたちの治療にあたる専用のICUがあるのは水戸市にある県立こども病院と、つくば市にある筑波大学付属病院。
県立こども病院では6床、筑波大学付属病院では8床ありますが、多くはありません。
こども病院では感染症の子どもたちを治療するケースでこの数年、今回ほど、増えるような状況はなかったといいます。
県の感染症対策課では、感染者が増えているとして、アルコール消毒や手洗いなどの基本的な感染対策で予防するよう呼びかけています。
【いつでもどんなときも誰でも使えるICU】
一方で、今回、取材した県立子ども病院の本山医師は、こうした感染症の流行で、重症化した人たちが増えた場合でも対応できる医療体制の構築が望まれると、指摘しています。
小児がんなどの病気で対応が必要になった子どもたちのためのICUの病床を、どんな状況になっても確保できるようにするためです。
(県立子ども病院本山医師)。
「災害や感染症が大流行している時であっても、いつでも、誰でも、どこに住んでいても重症病床にアクセスできる小児医療体制を追求し続けることが、今後は必要になってくると思います」。