宇宙飛行士候補 茨城県育ちで国際機関勤務の男性など2人

JAXA=宇宙航空研究開発機構が14年ぶりに実施した宇宙飛行士の選抜試験で過去最多の4127人の中から、茨城県つくば市育ちで国際機関に勤める46歳の男性など2人が選ばれました。

宇宙飛行士の候補に選ばれたのは、世界銀行に勤めるアメリカ在住の諏訪理さん(46)と、日本赤十字社医療センターの医師で都内に住む米田あゆさん(28)の2人です。

【諏訪さん 2度目の挑戦で最年長での選抜】
このうち諏訪理さんは、東京都生まれ、つくば市育ちの46歳。
1999年に東京大学理学部地学科を卒業した後、アメリカのデューク大学で修士課程を、プリンストン大学で気候科学を専門に研究して、博士課程を修了しました。
アメリカ留学中には、研究のために南極に滞在した経験があります。
その後、JICA=国際協力機構の青年海外協力隊などを経て、現在はアメリカの首都ワシントンに本部がある世界銀行に勤め、途上国の支援活動などを行っています。

宇宙を目指した最初のきっかけは小学生のときに雑誌の企画でNASA=アメリカ航空宇宙局を訪れた際宇宙飛行士に出会った経験で、前回、2008年に始まった宇宙飛行士選抜試験も受験しています。
今回、2度目の挑戦で夢をつかみました。これまでで最年長となる46歳での選抜です。

諏訪さんは、28日都内で開かれた会見にオンラインで出席し、「合格の連絡をもらったのは24時間前ですが、とても驚き、大きな責任を負うことになったと感じました。昨夜は気持ちが高ぶり、眠れませんでしたが、仕事をしっかりしていかなければならないと思っています」と話しました。

【諏訪さん 合格発表当日は】
合格発表当日、諏訪さんは一緒に暮らす妻と2人の娘とともに、アメリカの自宅で合否の連絡を待ちました。そして、電話で合格を告げられると、それまでの緊張から解放され、ほっとした表情を浮かべました。

諏訪さんはNHKの取材に、「正直、全く現実感がない。受かると思っていなかったのでびっくりしている。試験に落ちたときのコメントは考えていたが、受かったときのコメントは考えていなかった」とうれしさをかみしめながら話していました。
そして、「前回の選抜試験の時は『やってやるぜ』みたいな気持ちがあったが、今回はわりと気楽に受けていたと思う。もしかしたらそれがよかったのかもしれない」と振り返っていました。
一方、最年長での合格については「日本の宇宙飛行士は高齢化が進んでいるという番組を見たことがあるが、ふたをあけてみたら46歳がいるとわかると周りから何と言われるのか気にはなる。それでも、46歳でもできるところを示せたのはうれしい」と話していました。
そして、月面にアメリカの国旗を立てるNASA=アメリカ航空宇宙局の宇宙飛行士の写真を手に、「夢の入り口に立てたのはすごく感慨深い。自分なのかはわからないが、月面に日本の国旗が立つ瞬間を見る日がくるかもしれないと思うと、ゾクゾクする」と期待を膨らませていました。

【諏訪さん「宇宙が身近なまちで育った」】
つくば市で育った諏訪さんは「小学3年生のときにつくば市内で行われた科学万博に両親にねだって何回も連れて行ってもらったのが、科学や宇宙について興味を持つきっかけになったかなと思う」と話しました。
また、「つくば市で育ち、JAXA筑波宇宙センターに徒歩で行ける距離に住んでいた。小さい頃はJAXAの前をよく自転車で通っていた。宇宙が身近なまちで育ったことがどこかで影響しているかなと思う」と話していました。

【長年の友人「月への到達を信じている」】
つくば市に住む櫻井隆史さんは、宇宙飛行士候補の諏訪さんと、中学校から大学院までずっと同級生だったということです。

櫻井さんはつくば市役所で取材に応じ、諏訪さんからは28日、SNSで、宇宙飛行士の選抜試験に合格したことを伝えられたと話しました。
櫻井さんは「おめでとう、夢がかなったね」とメッセージを送ったということです。

櫻井さんは「私も諏訪さんに触発されて宇宙が好きになり、前回の宇宙飛行士試験を受けました。諏訪さんは情熱を持って最後までやり抜く行動力を持っています。これからの方が大変だと思うが、月への到達を信じています。ぜひ頑張ってほしいです」と話していました。

【つくば市五十嵐市長「宇宙の話が彼のスタイル」】
諏訪さんについて、つくば市の五十嵐立青市長は、子どものころに家が近所で、小学校から高校まで諏訪さんが2学年上の先輩だったことを明らかにし、「よく遊びに行っては一緒にキャッチボールをしたりしていた。中学校では生徒会長で、運動会や卒業式などさまざまなイベントのときに宇宙の話を必ずするのが彼のスタイルだった。当時から宇宙への思いや可能性を語っていた」と話しました。
その上で、「厳しい選抜試験を経て宇宙飛行士の候補に選ばれて、本当にうれしく思う。つくばで育った少年が夢をかなえていつか月の上を歩く瞬間があるかもしれないと想像するとわくわくする。これから困難なことが続くと思うが、プレッシャーを力に変えてくれると思う。JAXA筑波宇宙センターのあるつくば市としても、全力で応援していきたい」と話していました。

【「科学万博きっかけ うれしい」】
諏訪さんは、小学3年生のときに地元・つくば市で開かれた科学万博に行ったことが、宇宙や科学に興味を持つきっかけになったということです。
つくば市にある「つくばエキスポセンター」は、38年前・1985年の「つくば科学万博」の展示施設を利用してつくられた科学館で、最新の科学技術などに親しんでもらう展示や、科学万博で披露された当時の世界最大級のプラネタリウムの機械などが展示されています。

つくば市内から2歳の娘と6歳の息子と一緒に訪れた母親は、「地元にゆかりのある人が合格したことはすごいですし、うれしいです。自分の子どもにもこういう場所をきっかけに科学や宇宙に興味をもってほしいです」と話していました。

つくばエキスポセンターの中原徹館長は、「諏訪さんがつくば科学万博に刺激を受けて宇宙への夢をもつきっかけになってくれたことは、とてもうれしいです。これからも子どもたちの心に届くように科学館での活動を続けたい」と話していました。

【今後のスケジュールは】
諏訪さんと米田さんは、JAXAが14年ぶりに実施した宇宙飛行士の選抜試験に臨み、筆記試験や面接、体力試験のほかプレゼンテーション能力をみる実技試験などを突破し、過去最多の4127人の中から選ばれました。
2人は今後、現在の職場を退職してことし4月からJAXAに入り、NASA=アメリカ航空宇宙局などで宇宙飛行士に必要な訓練を受けることになっています。
宇宙飛行士に正式に認定されるのは2年後、2025年3月ごろの見通しで、国際的な月探査計画に参加して月を周回する新たな宇宙ステーションへの搭乗や、月面に降り立つ可能性もあるということです。