茨城県9市町村 千島・日本海溝巨大地震「特別強化地域」に

「千島海溝」と「日本海溝」で想定される巨大地震で津波による甚大な被害のおそれがあるとして、茨城県の沿岸の9の市町村が対策が強化される「特別強化地域」に指定されました。

30日午後、総理大臣官邸で開かれた中央防災会議の会合では、北海道から岩手県にかけての沖合にある「千島海溝」と「日本海溝」で想定される巨大地震と大津波について特別措置法に基づいて防災対策を強化される地域の案が示され、岸田総理大臣が指定しました。
このうち、茨城県については「特別強化地域」に北茨城市から神栖市までの県内の沿岸9つの市町村が指定されました。
「特別強化地域」は津波による甚大な被害のおそれがあるとされ、津波避難タワーや避難のための道路などの整備にかかる費用について、国の補助率が2分の1から3分の2に引き上げられるほか、高台への集団移転を進めやすくする手続きの特例が適用され、津波対策が強化されます。
また、震度6弱以上の激しい揺れのおそれがあるとして「推進地域」に茨城県内の40の市町村が指定されました。
「千島海溝」と「日本海溝」をめぐっては、国が去年末に公表した被害想定では、県内の沿岸に東日本大震災に匹敵する高さの津波が押し寄せ最悪の場合、800人が死亡し、600棟の建物が全壊するとしています。
今後、各自治体が新たな計画を策定し、具体的な対策を進めることになります。

【強化地域・推進地域指定は】
「千島海溝」と「日本海溝」で想定される巨大地震で、茨城県内で津波による甚大な被害のおそれのあるとして「特別強化地域」に指定されたのは、北茨城市、高萩市、日立市、東海村、ひたちなか市、大洗町、鉾田市、鹿嶋市、神栖市の9つの市町村です。

また、震度6弱以上の激しい揺れのおそれがあるとして「推進地域」に指定されたのは、水戸市、日立市、土浦市、石岡市、結城市、龍ケ崎市、下妻市、常総市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、笠間市、取手市、牛久市、つくば市、ひたちなか市、鹿嶋市、潮来市、常陸大宮市、那珂市、筑西市、坂東市、稲敷市、かすみがうら市、桜川市、神栖市、行方市、鉾田市、つくばみらい市、小美玉市、茨城町、大洗町、城里町、東海村、大子町、美浦村、阿見町、河内町、八千代町、利根町の40市町村です。

【指定された大洗町は】
「特別強化地域」に指定された茨城県内の自治体の1つ、大洗町は東日本大震災を受け津波対策を進めていて、今回の指定を受けて対応を検討するとしています。
国が去年末に公表した被害想定では、茨城県の津波の死者は、最悪の場合800人にのぼるとされています。
このうち大洗町では4.8メートルの津波が押し寄せると想定され、町役場の庁舎が最大で2.1メートル浸水するとされています。
大洗町は2011年の東日本大震災で、震度5強の揺れで1人が死亡したほか、高さ4メートルの津波が押し寄せ町役場や多くの住宅が浸水しました。
震災の後、海水浴場の「大洗サンビーチ」に、津波から避難するための海抜9メートルの高さにおよそ180人が避難できる津波避難施設を建設するなど対策を進めています。
町は、「千島海溝」と「日本海溝」の巨大地震の「特別強化地域」に指定されたことを受けて、今後の対応をどのように行うか県や周辺自治体とも協議しながら検討していきたいとしています。

【被害想定は】
2021年12月に公表された「日本海溝」「千島海溝」の巨大地震と津波の被害想定では、茨城県内でも東日本大震災に匹敵する高さの津波が押し寄せると推計されています。
日本海溝沿いの巨大地震で想定されている津波の高さはいずれも最大で北茨城市の五浦海岸で6.5メートル、神栖市の鹿島港付近で5.7メートル、鹿嶋市の下津海水浴場付近で5.4メートルなどとなっています。
また、大洗町では大洗港で4.8メートルの津波が想定されているほか、町役場の庁舎が最大で2.1メートル浸水するとされています。
今回の想定では、この津波によって、日本海溝沿いの巨大地震では茨城県内で最悪の場合、800人が死亡し、600棟の建物が全壊。
救助が必要な人の数は400人にのぼるとしています。
また、200人がけがをして、1万人が避難を余儀なくされるとしています。
千島海溝沿いの巨大地震では茨城県内で最悪の場合、100人が死亡し、70棟の建物が全壊。
救助が必要な人の数は100人にのぼるとしているほか、60人がけがをして、3100人が避難を余儀なくされるとしています。
一方、被害想定では防災対策を進めることで具体的に被害をどの程度減らせるかについても示されています。
このうち、人的被害を最も減らすとされたのが「避難先の確保」と「避難の迅速化」です。
津波避難タワーなどの施設を整備して避難先の確保を進めるとともに浸水域にいるすべての人が10分ほどで避難を始めれば、茨城県内の死者やけが人の数をゼロにすることができるとしています。

【特別強化地域とは】
「特別強化地域」とは巨大地震で津波が発生した時に甚大な被害が生じるおそれがあるとして特に津波対策の強化が求められる地域です。
千島海溝・日本海溝地震の特別措置法に基づいて、北海道から千葉県にかけての7の道県の108の市町村が指定され、青森と岩手、宮城、福島、それに茨城の各県では沿岸地域のすべての市町村が指定されました。
北海道と東北では冬季には防寒着を着込んだり雪道を徒歩で避難したりするのに時間がかかると見込まれることから、地震発生後40分以内に30センチ以上の津波が想定される地域を対象にしています。
また、茨城と千葉では「南海トラフ」の基準と同じ、地震発生から30分以内に津波で30センチ以上浸水する地域としています。

今回の指定に先立って、南海トラフ巨大地震で被害が想定されている太平洋沿岸関東から九州にかけての1都13県の市町村は2014年に「特別強化地域」に指定されました。
指定を受けた地域では津波避難タワーなどの整備のほか福祉施設や学校の高台移転にかかる費用などの補助が受けられるようになり、ハードの対策が進められています。
内閣府によりますと、2021年4月時点で全国に502基ある津波避難タワーの77パーセント(385基)は南海トラフ巨大地震の特別強化地域に指定されている市町村にあります。
このうち、高知県黒潮町では、最大で18メートルの浸水のおそれがあると想定される地域に高さ22メートルの津波避難タワーを整備しました。
町ではさらに、職員を各地区ごとに割り当てて避難路や避難場所を住民と一緒に確認したほか、実際に避難タワーへ逃げる訓練を行うなど、犠牲者を出さないための取り組みが進んでいます。

【国の基本計画変更】
今回の中央防災会議では、「千島海溝」と「日本海溝」で想定されている巨大地震の防災対策の指針となる国の基本計画が変更されました。
このなかで達成すべき40の目標が具体的に示され、対象となるすべての沿岸市町村で津波避難タワーやビルの指定、毎年の避難訓練の実施を目指すほか、改修支援を進めて2030年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することなどが掲げられています。
また、数値目標は設定されていませんが、防寒機能を備えた避難施設の整備、低体温症を防ぐために乾いた衣類や暖房器具などの備蓄、避難路の凍結や積雪対策などをあわせて進めるとしています。
今後10年間でこれらの対策を行い、日本海溝沿いで最大19万9000人、千島海溝沿いで最大10万人と国が想定している死者数をおおむね8割減らすという「減災目標」を定めています。
このほか、マグニチュード7クラスの地震が起きた場合、その後の巨大地震の発生に注意を呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を周知したり、運用したりして、日ごろの備えを進め、迅速な避難につなげたいとしています。
きょうの会合では地震の被害の対策を盛り込んだ国の基本的な計画も変更され、対象となる自治体はこれに基づいて地域ごとに防災対策の計画作りを進めることになります。