茨城 牛久 入管施設収容カメルーン人男性死亡 裁判の争点は

8年前、茨城県牛久市の入管施設に収容されていた、カメルーン人の43歳の男性が死亡したことをめぐる裁判の判決が16日、水戸地方裁判所で言い渡されます。
当時、「I’m dying」(死にそうだ)などと男性は苦しむ様子をみせ、亡くなりました。
遺族は「不調を訴え助けを求めていたのに救急搬送などを行わず適切な医療を受けさせなかった」などとして国に1000万円の賠償を求めています。
一方、国は、専門的な知識のない職員が救急搬送の必要性があると認識するのは難しかったなどとして争う姿勢をみせています。
男性が亡くなった経緯とともに裁判の争点を取材しました。

【原告の弁護団長「間違いなく助かった命」】
この裁判で弁護団長を務める、児玉晃一弁護士です。裁判では、入管の施設で適切な医療を受けられる対応がなされていれば男性が助かる可能性は高かったと主張しています。

(弁護団長 児玉晃一弁護士)
「収容されていた状態でも、普通の人が普通の対応をしていれば、間違いなく助かった命だった。何もしないことで亡くなってしまった。」

【「I’m dying」(死にそうだ)】   
男性はどのような状況で亡くなったのか。これまでの裁判で提出された資料などから見ていきます。2013年10月、男性は成田空港に到着しましたが、入国が認められず、退去命令に応じなかったとして、11月に牛久市にある東日本入国管理センターに収容されました。
男性は糖尿病などをわずらっていたとみられ、薬を処方されていました。しかし、翌年2月以降、体調不良を訴えるようになり、亡くなる3日前の3月27日には「気分が悪くて立つことができない」と申し出ました。男性はカメラで24時間動静をチェックできる休養室に移されました。   
同じ日に受けた医師の診療には、血液検査の結果次第では外部の医療機関での診察が必要と指摘されていました。
2日後の29日。裁判で弁護側に開示された入管のカメラの映像には、男性がカメラに向けて職員を呼ぶボードを振り、職員の助けを得ながらベッドから車いすに移る様子が映されていました。

そして、午後7時12分ごろ。
男性は「I’m dying(死にそうだ)」と苦しみながら声をあげます。さらに、ベッドから落ち、気づいた入管の職員が男性を戻します。
その後、職員が床に敷いた布の上で男性がうめき声をあげる姿も映されていました。
施設が救急要請をしたのは翌朝、30日の午前7時ごろ。しかし、搬送先の病院で1時間後に死亡が確認されました。
休養室での男性の状態を記した入管の記録には、異状の有無を記す欄がありますが、亡くなる前日から当日未明までの間「異状有り」とされたのは、ベッドから落ちたときの1回のみでした。

【児玉弁護士「当たり前のことをしなかったのが一番大きな問題」】
弁護団長の児玉弁護士は、なぜ、男性の異変に早く気づくことができなかったのか、そして、救急車を呼び、医療を受けさせるという判断をしなかったのか、その責任を問いたいとしています。

(弁護団長 児玉晃一弁護士)
「もう一目瞭然で、あれだけ大きな声で叫んでベッドからも転げ落ちるような人をみて、むしろ医療の専門家じゃないからこそ、専門家につないで、救急車を呼ぶという対応をすべきだと思います。道ばたで見知らぬ人がこういう状況になっていて、見逃すでしょうか?そういう当たり前のことをしなかった。そこが一番大きな問題だと思っています。」

入管施設をめぐっては去年、名古屋市でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなるなど、収容された人が死亡する事案が各地で起きていて、こうした事案を繰り返さないために重要な裁判になると考えています。

(弁護団長 児玉晃一弁護士)
「男性のお母さんと1度お話をしようとしましたら、一言も話すことはできませんでした。ずっと泣いていました。弁護団は二度とこういう同じようなことを起こさせないようにという思いしかない。僕らとしては、裁判を積み重ねていくしかないと思います。」

【国 訴え退けるよう求める】
一方、被告の国は、弁護団に反論し訴えを退けるよう求めています。救急搬送していれば、男性は助かったという弁護団の主張に対して、国は「救急搬送すれば救命できたという蓋然性(がいぜんせい)はみられない」と主張していて、助かった可能性を、認めることはできないとしています。

また、争点の1つになっている、速やかに救急搬送を要請しなかった点について「医療従事者ではない入管の職員が、男性が意識障害を伴っていると認識することは難しい」として、職員が前日の夜に救急搬送しなかったことに責任はないと主張しています。

入管施設の収容のあり方についてどのような判決が示されるのか、注目されます。
判決は水戸地方裁判所で16日午後1時半から言い渡される予定です。

(取材:NHK水戸放送局 住野博史・藤原陸人・藤田梨佳子)