「木次線18駅の物語」 三井野原駅

JR木次線の魅力を再発見するシリーズ、「木次線18駅の物語」。
10回目の舞台は奥出雲町の三井野原駅です。

地元出身の男性が去年、「地域を元気にしたい」という思いから、この地域に20年ぶりとなる飲食店を開業しました。
奥出雲町の三井野原駅はJR西日本で最も標高の高い駅で、とても雪深い所にあります。
1970〜80年代にはたくさんのスキー客が訪れ臨時列車が走るほどにぎわっていました。
しかしスキーブームが去り、10以上あったスキー場で今、営業しているのはひとつだけです。
その唯一のスキー場の隣に、去年、一軒のそば店がオープンしました。
この地域での飲食店の開業は、およそ20年ぶりとなります。
そば店を開業した田尾海星さんは次のように話しています。
「自分が生まれ育った三井野原地区が少しでも元気になればいいです」。
田尾さんの店は松江市から車で1時間半と都市部からは離れていますが、そばのおいしさが評判になり天気さえよければお客さんは来てくれました。
またすぐ隣に線路があり木次線を走る列車が店内からよく見えます。
夏と秋には奥出雲おろち号目当ての人も。
しかし寒さが厳しい1月になると客の数が急激に減ってしまいました。
田尾さんは店を守るために2月は平日のほとんどを臨時休業とし週末と土日祝のみの営業に踏み切りました。
覚悟はしていたものの直面した厳しい現実でした。
それでもこの三井野原で店を続けたいという田尾さん。
家族への思いがありました。
田尾さんの祖父は75年前に開拓者として三井野原に移住し農地を切り開いてスキー場を開設しました。
そのスキー場を今は、田尾さんの父が受け継ぎ守っています。
田尾さんは「祖父が作り上げた土地を自分たちが頑張って残していきたい。この場所を無くしてはならない」。
と話していました。
2月に入って最初の日曜日、田尾さんは朝早くからそばを打っていました。
この日は55食が用意されました。
この日のスキー場は前日に雪が降った影響で、家族づれでにぎわいました。
正午を過ぎると店内の客が増えとてもおいしそうにそばを食べていました。
早朝から準備したそばのほとんどが売れ田尾さんは「今年の土日では一番多い人数のお客さんに来ていただけました。すごくうれしいです」。
「三井野原駅で降りてうちの店に食べに来るお客さんが今以上に増えてくれればすごくいいです」