去年12月以降の冬眠時期にクマの目撃多数 注意呼びかけ

クマによる被害が全国で過去最悪になるなか、島根県では、通常クマの冬眠期間とされている去年(2023年)12月以降も目撃件数が50件にのぼり、前の年(2022年)の同じ時期の2倍以上になっていて、県が注意を呼びかけています。

環境省のまとめでは、今年度、クマの被害を受けた人は、先月(1月)までに全国で218人で、過去最悪だった2020年度の158人をすでに上回っています。
通常、クマは、11月下旬から12月ごろに冬眠に入るとされていますが、島根県では、去年12月に40件、先月・1月に10件と、クマの目撃件数は合わせて50件にのぼり、前の年の同じ時期より28件増え、2倍以上になっています。
クマの生態に詳しい県中山間地域研究センターは、暖冬の影響で活動しやすい環境が続いていることから、クマの冬眠期間が短くなり、エサを求めてはいかいする個体がいる可能性があるとしています。
また、県内のクマの個体数が増加傾向にあることも背景のひとつとしていて、島根県は、引き続きクマを人里に寄せつけないため、生ゴミを野外に放置せず、ゴミ出しは収集の直前に行うようにするなど注意を呼びかけています。

急がれるクマへの対策。
検討を進めてきた環境省の検討会は、先週、方針をまとめました。
その1つが「指定管理鳥獣」への追加です。
「指定管理鳥獣」は、全国的に生息数が著しく増加している、または、生息地の範囲が拡大している野生動物が対象です。
指定されると適正な個体数を管理するための捕獲などにかかる費用を国が交付金で支援します。
そして、クマの分布など生息状況のモニタリングを定期的に実施し、過度な捕獲はせず限定的にする必要があるとしています。
また、人とクマの生息域の間に、木を伐採するなどの環境整備や個体数管理を強化した「緩衝地帯」を作り、人の生活圏への侵入を防ぐことも必要だとしています。
環境省は、クマが冬眠から目覚めるとされる4月中には、四国地方を除いて「指定管理鳥獣」に追加する方針です。
伊藤環境相は、「環境省としては方針をしっかり受け止め、関係省庁や都道府県等とも連携し、必要な対策を速やかに実行して参ります。クマ類による被害防止策を推進し、国民の皆さまの安全安心を確保して参ります」と話しています。
クマの生態に詳しい専門家は、「クマの数を減らすことが目標だと思われがちだが、人とクマとのあつれき、出没、人身被害を減らすことが究極の目標。十分調査できなかったクマの個体数や被害の状況を国の補助を得てしっかりと調査できることが大きなメリット」だと話しています。
この「指定管理鳥獣」、現在はニホンジカとイノシシが指定されていますが、そこにクマも入るということです。
島根県と同様、この時期に目撃が相次いでいる秋田県では、「母グマとはぐれた子グマが冬眠の方法がわからずさまよっている状況も考えられる」という専門家の見立てもあります。
いずれにしても、クマへの注意は引き続き怠らないようにしたほうがよさそうです。