島根大学医学部 来年中の肝移植再開に向け体制作り始める

国内初の生体肝移植を行った島根大学医学部が、来年(2024年)中の肝移植再開に向けて、付属病院にワーキンググループを設け体制作りを始めました。
島根大学では、国内初の移植が行われた1989年以降、肝移植は行われておらず、山陰両県での移植医療の充実につながるか注目されます。

島根大学医学部には、ことし4月、肝移植について国内外で300件以上の実績のある日高匡章教授が、長崎大学から赴任してきました。
日高教授の赴任を受けて、大学では、来年中に肝移植の実施を目指して準備を進めているということです。
大学では、若手医師がほかの病院で実施される移植手術を見学するなどしたほか、先月(9月)には、医学部付属病院のおよそ20の部局が参加するワーキンググループを設け、術後の感染症対策などに対応する体制作りを進めています。
島根大学医学部は、島根医科大学だった1989年に、当時世界で4番目になる生体肝移植に国内で初めて取り組み、1歳の男の子に父親の肝臓の一部を移植しました。
これが国内で肝移植が広がるきっかけになり、日本肝移植学会によりますと、国内ではおととし(2021年)末までに1万839件の移植が行われています。
一方、健康な人の体を傷つける臓器移植をめぐっては、当時、倫理的な観点から議論になり、島根大学では、この手術以降、肝移植は行われてきませんでした。
山陰両県では、鳥取大学医学部でも体制が整っていないため、近年、肝移植の実績がなく、両県の患者が専門の医療を受けるにはほかの県に行くしかなかったということで、島根大学医学部の取り組みが、移植医療の充実につながるか注目されています。
島根大学医学部附属病院の椎名浩昭院長は、「移植医療は、頻度的には少ないが非常に重要な医療だ。住みやすい地域に資する移植医療の提供体制の充実を図っていきたい」とコメントしています。