「一畑百貨店」閉店へ 困惑と懸念広がる

県内唯一のデパート、「一畑百貨店」の閉店決定。
地域経済や市民生活への影響は。
100人を超える従業員はどうなるのか。
困惑と懸念が広がっています。
松江市の上定市長は、「経済的な混乱が起きないように対応するのが使命だ」として専門の対策チームを立ち上げると明らかにしました。

松江市の「一畑百貨店」は、県内唯一のデパートとして半世紀あまりにわたって市民に親しまれてきましたが、大型ショッピングモールの出店や新型コロナの影響などで業績が悪化し、経営の改善は見込めないとして来年1月14日で閉店することを決めました。
14日、松江市の上定市長は取材に応じ、「大変残念だが、民間事業者の経営判断なので受け入れざるを得ない。今後、経済的な混乱が起きないように対応するのが松江市の使命だ」と述べました。
そのうえで、地域経済やまちづくりへの影響を念頭に、専門の対策チームを庁内に立ち上げ、市民の不安を払拭するとともに従業員の再就職の支援も含め、国や県などと連携して対応していくと明らかにしました。
また、上定市長は、「一畑百貨店が立地するJR松江駅前は“松江の玄関口”で、市民にも観光客にも誇れる場所であるべきだ。駅前の開発をどう進めるかも考えなくてはいけない」と述べ、今後のにぎわいの創出に向けた中長期的な計画も改めて検討していく考えを示しました。

「一畑百貨店」が閉店を決めたことを受け、島根県は、「地域経済や雇用への影響を最小限に抑えたい」として、15日、関係部局が集まって情報収集にあたるほか、従業員の再就職のサポートや取引事業者への支援などについて必要な対策を協議することにしています。

県内唯一のデパート、「一畑百貨店」の閉店が決まったことを受け、街の人からは、今後の買い物など市民生活への影響を心配する声があがっています。
13日夜、一畑百貨店の閉店が決まったことが発表されてから一夜があけ、店には14日、臨時休業を知らせる看板が出されていました。
松江市内で働いている20代の女性は、「化粧品を買うためによく利用していた。インターネットで買うより現物を見て買いたいし、百貨店だけのブランドもあったのでショックだ」と話していました。
また、松江市の男性は、「百貨店では子どものランドセルを買った。日用品とは違う、高級品や贈り物を買うために利用してきたので閉店と聞いて驚いた」と話していました。

一畑百貨店が閉店を決めたことを受け、関係者には動揺が広がっています。
松江市の老舗和菓子店では、百貨店が開業した当時からテナントとして出店していて、お中元やお歳暮などを買い求める客が多く訪れていたといいます。
「風流堂」の内藤葉子代表取締役は「閉店になると思っていなかったので、本当に驚いた。お客のリクエストや希望を聞くことで勉強させてもらった。百貨店には本当に育ててもらった」と話していました。
閉店の経緯や百貨店側の今後の方針など、詳細についてはまだ説明を受けていないということで、「お客が困らないように他の店舗で買い求めてもらうように案内していきたい」と話していました。

県内唯一のデパート、「一畑百貨店」の閉店が決まったことを受け、百貨店で毎年、全国各地の工芸品を集めた展示会を主催している出雲市の鍛冶職人は、職人の技術を披露する機会が少なくなるかも知れないと懸念を示しています。
一畑百貨店は“買い物の場”としてだけではなく、物産展や写真展などのイベントが数多く開かれる“文化発信の場”としても親しまれてきました。
全国各地の職人が手作りした工芸品を集めた「全国匠の工芸展」を毎年9月に主催してきた出雲市の鍛冶職人、高橋勉さんは「一畑百貨店には当初から“好きなようにやっていい”と言ってもらい、お世話になった。全国の展示会の中でも、工芸品を特にしっかりお客に見てもらえるので“行きたい”という職人が増えてきていた。非常に残念だ」と話していました。
そのうえで、「地元の一畑百貨店なら経費を低く抑えることができたが、県外で展示会を開くとなるとコストの問題も出てくる。これから、職人の技術を披露する機会をどうにかして作っていかないといけない」と話していました。
なお、ことし9月の一畑百貨店での展示会の開催はすでに決定していて、32の業者が参加する予定だということです。