渋川で地区ごと災害対応マニュアル作り アドバイザーが推進

能登半島地震から1日で半年です。
災害時に孤立する集落が多く発生するリスクがあるとされる渋川市では迅速に避難や安否確認ができるように、市民みずから地区ごとに対応マニュアルを作成する取り組みを進めています。

能登半島地震では土砂崩れなどで道路が寸断され、各地で集落が孤立状態となり、物資や通信手段の確保などの課題が浮き彫りとなりましたが、群馬県内も山に囲まれた地域が多く、災害時は集落が孤立するリスクがあります。
内閣府の調査によりますと、2010年時点で、地震や水害によって孤立する可能性のある集落の数は県内では、みなかみ町が59の集落と最も多く、次いで沼田市が57の集落、渋川市が51の集落などとなっています。
このうち、渋川市では孤立集落が発生するような大規模災害などに備え、市民みずから地区ごとに災害時の対応マニュアルを作成する取り組みを始めています。
マニュアルは市内を105の地区に分けて作られ、それぞれの地区で安否確認などに必要な連絡網や、避難先などをまとめています。
また、地域の実情に即し、浸水リスクの高い地区などによっては、指定避難所以外にも頑丈な建物の2階に避難することなども記されています。
このマニュアル作りはおととしから4か年計画で進めていて、すでに60の地区で作成を終えているということで、渋川市は能登半島地震の発生を受けて、マニュアルの必要性を市民に呼びかけていきたいとしています。
渋川市の「気象防災アドバイザー」、尾台正信さんは「マニュアル作りは、自分たちの地域は自分たちが守るということを改めて考えてもらうきっかけになっていると思う」と話していました。

【防災対策を担う気象防災アドバイザー】
災害に備えた地区ごとのマニュアル作りなど、渋川市で防災対策の中心的な役割を担っているのが「気象防災アドバイザー」を務める尾台正信さん(66)です。
「気象防災アドバイザー」は住民や自治体職員に防災に関する研修を行うほか、災害時には避難情報の発令などについて、自治体にアドバイスする役割などを担っています。
尾台さんは1988年に気象庁に入庁し、三宅島の噴火や東日本大震災の対応などにあたってきました。
そして、気象庁を退官したあと、3年前から渋川市の「気象防災アドバイザー」としての業務を始め、地区ごとの災害時の対応マニュアル作りを推進してきました。
このほか、尾台さんは市民や職員を対象にした防災講座・研修の開催や、避難訓練の計画などにも携わり、地域防災の強化に取り組んでいます。
尾台さんは能登半島地震について「まさか1月1日にあのような地震が起きるとは思わなかったと思う。多くの尊い命が失われる時に頭に出てくるのは『まさか』という言葉だ。その『まさか』がないように、幅広く対応していかなければならない」と指摘しています。
その上で、「群馬は災害が少ない」と言われていることについて「いつ群馬や渋川に地震があってもおかしくない。日本に住んでいるかぎり、地震や風水害は隣り合わせで、災害大国に暮らす立ち居振る舞いをしっかりと学んでおく必要がある」と警鐘を鳴らしています。