暖冬 葉物野菜中心に価格下落 農家「利益ほとんどない」

暖冬となっているこの冬、県内では葉物を中心に野菜の生育が例年より早まり市場への出荷量が増えていて、JA全農ぐんまによりますと、葉物野菜の小売価格の平均は、例年よりも全体で2割ほど下がっているということです。

県内は先月から今月にかけて暖かい日が続き、このうち先月は前橋市の平均気温が5.6度と平年より1.9度高く、1897年に統計を取り始めて以降、2番目に高くなりました。
JA全農ぐんまによりますと、この暖冬で、葉物を中心に野菜の生育が例年より早まり、市場への出荷量が増えて需給のバランスが崩れた結果、葉物野菜の小売価格の平均は今月上旬の時点で例年よりも全体では2割ほど下がっているということです。
このうち、ほうれんそうは1袋100円ほどで去年より20円ほど、小松菜は、1つあたり60円から70円ほどで30円から40円ほど安くなっているということです。
JA全農ぐんまは「これまでにない価格の下落で消費者にとってはうれしい一方で、農家は収入面で苦しい現状にある」と話していました。

暖冬の影響で葉物野菜を中心に生育が早まって出荷量が増え、価格が下がっていることなどを受けて、ほうれんそうの出荷量が全国一の群馬県の農家からは、「利益がほとんどない」と厳しい声が聞かれています。
群馬県太田市の農家、久保田泰成さん(64)は、2ヘクタールほどの畑でほうれんそうなどの葉物野菜を42年前から育てています。
ことしは暖冬の影響で、生育が例年より2週間ほど早まっているため、収穫の予定を当初から早めて、今は朝から夕方まで、技能実習生などと共に急ピッチでの作業を続けています。
ただ、収穫されたほうれんそうは暖冬で葉が薄いものが多くなり、出荷の際の規定の重さを満たすために、1袋に入れる株の数を通常の2倍ほど入れなければならないということです。
暖冬のために市場への全体的な出荷量が増え、需給のバランスが崩れて価格が下がっていることに加え、限られた人員で短期間に多くの量を出荷しなければならず、さらに、肥料価格の高騰も経営を圧迫しているということで、久保田さんは、収入の減少について懸念を示しています。
1袋当たりのもうけは、去年と比べて4円ほど下がっているということで、久保田さんは「苦しいなかで肥料代などを賄わなければならず、利益はほとんどない。消費者の方には『決して安く作られているのではない』とわかってもらったうえで、たくさん食べてほしい」と話していました。