高崎市の老舗酒造会社 ウイスキー生産 21日初出荷

日本産のウイスキーの評価が海外で高まる中、群馬県高崎市の創業330年あまりの酒造会社が自社の蒸留設備を使ったウイスキーの生産を行い21日初めて出荷を始めました。
老舗の酒造会社によるウイスキー生産の動きはほかの県でも始まっていて、今後も広がるのか注目されます。

日本産のウイスキーをめぐってはことし、日本初の本格的な蒸留所の建設開始から100年を迎える中、11月、イギリスで行われたオークションでは、長野県で製造された1本が、日本円で5500万円あまりで落札されるなど、海外で高い評価を受けています。
こうした中、群馬県内では最も古い1690年に創業した酒造会社で高崎市倉渕町にある「牧野酒造」が去年から自社に蒸留設備を整えてウイスキーの生産を行い、21日初めて出荷しました。
出荷したのは蒸留した原酒に少量の水を加えた、樽で熟成する前の透明なウイスキーで、会社は今後、樽で熟成させた製品の生産も行うということです。
老舗の酒造会社によるウイスキー生産の動きは広島県や長崎県などでも始まっていて、背景には、海外での高い評価に加え、国内での日本酒の消費量の減少があるとみられ、今後も広がるのか注目されます。
牧野酒造の牧野顕二郎社長は「地方の酒蔵がつくる『地ウイスキー』として広めていきたい」と話していました。

前橋税務署によりますと、県内でウイスキーの製造免許を持つ酒造会社は11月末の時点で3社だということです。
牧野酒造以外の2社によりますと、自社でウイスキーの蒸留は行っていないということで、牧野酒造が唯一、自前の蒸留設備で生産を行っていることになります。
今回、牧野酒造が生産したウイスキーは、前橋市や高崎市などの酒販店で取り扱われる予定だということです。

酒造会社がウイスキーの生産に乗り出す背景には、ウイスキーの海外での高い評価や、国内でも日本酒の消費量が減少する一方で、ウイスキーは好調なこと、さらに日本酒造りで培ったノウハウを生かせることもあります。
国税庁によりますと、日本酒の国内での消費量は50年ほど前のピーク時には、167万キロリットルあまりにのぼっていました。
しかし、その後は減少傾向が続き、2021年度には40万キロリットルあまりと、ピーク時の4分の1を下回っています。
一方、ウイスキーの国内消費量は減少傾向が続いていたものの、2008年度のおよそ7万5000キロリットルで底を打ち、その後は、増加傾向に転じました。
そして、2021年度には16万8000キロリットルと10年あまりで2倍以上になりました。
こうした中で老舗の酒造会社が日本酒造りでも行う「糖化」や「発酵」と呼ばれる工程のノウハウを生かしてウイスキーの製造に乗り出す動きはほかの県でもみられ、去年以降、広島県や長崎県などの老舗の酒造会社が生産を始めています。