狩猟免許持つ人 半減も近年回復傾向 県が若い世代育成確保へ

野生動物の出没や農林業への被害が相次ぐなか、対策には欠かせない狩猟免許を持つ人は、県内ではピーク時の半数程度に減った一方で、近年は回復傾向にあります。
県は、狩猟の役割や意義を知ってもらう取り組みを進め、若い世代の育成や確保を図る考えです。

野生動物の出没が県内各地で続くなか、県によりますと県内での野生動物による農林業への被害額は昨年度、およそ5億円にのぼっています。
こうした状況を受けて県が、狩猟者に野生動物の捕獲強化を呼びかけた結果、主に被害をもたらすニホンジカ、サル、カモシカ、イノシシ、それに、クマの捕獲数は増加傾向にあり、中でもニホンジカはおよそ3倍に増えました。
一方で、捕獲を担う狩猟免許を持つ人は、異なる種類の免許を持つ人も含めた延べ人数で、ピークだった40年ほど前の半数に満たない4562人まで減少しているということです。
そして、その半数あまりが60歳以上と高齢化が進んでいます。
ただ、担い手の確保や育成が急務となるなかで、県が、狩猟の役割や意義を知ってもらう取り組みを進め、狩猟免許を持つ人は昨年度、過去最少だった2006年度から900人ほど増えて回復傾向にあります。
また、60歳未満の割合は2020年度が39.8%だったのに対して、昨年度は4ポイント近く上がって43.5%になっていて、県は今後も取り組みを強めて、若い世代の育成や確保を図る考えです。

狩猟免許を持つ人が回復傾向にあるなかで、去年、免許を取得して新たに狩猟を始めたのが、前橋市の42歳の萩原翔吾さんです。
萩原さんは大工として働きながら、週に2日ほど、わなを使った猟をしています。
狩猟を始めたきっかけは、父の畑が野生動物に荒らされる被害が相次いだことです。
知り合いの農家と被害について話すなかで、「自分が被害を防ぎたい」と思い立ったといいます。
狩猟を行っていた父親や、猟友会の先輩たちから学びながら、これまでに主にイノシシを20頭あまり捕獲してきたということです。
萩原さんは「イノシシが一度畑を通ると畑全体が荒らされるといった被害があると聞いて、自分もやってみようと思った。高齢で獣害を防ぐことが難しい農家もあるので自分が役に立ちたい」と話していました。
また、萩原さんが所属する前橋北部猟友会の今井進会長は「猟友会は高齢の人も多いので若い世代に頑張ってほしいし、われわれのような経験者がどう育てていくかも重要だ。萩原さんは勉強熱心で捕獲数も多く、大いに期待している」と話していました。

狩猟の役割や意義を知ってもらう取り組みを進める県は、高校で特別授業を行ったり、動画投稿サイトを活用したりしているほか、免許の試験にかかる費用も一部で抑えています。
具体的には、狩猟についてのイベントを4年前から開いているほか、YouTubeでは狩猟者に密着した動画を配信しています。
また、狩猟免許の試験については、会場や日程を増やして受験しやすくしたほか、わなを使う猟の免許の試験では、通常は5200円かかる手数料を18歳と19歳に限って免除しています。
みずからも狩猟免許を持つ県自然環境課の金子文大主任は「被害を減らすために動物の捕獲はどうしても必要なものだ。狩猟について知ってもらう機会を、今後も増やしていきたい」と話していました。