空海ゆかりの国宝「高雄曼荼羅」染料に希少な「紫根」使用判明

京都市の神護寺に伝わる空海ゆかりの国宝のまんだら「紫綾金銀泥絵両界曼荼羅図(むらさきあや・きんぎんでい・え・りょうかいまんだらず)」について、京都国立博物館などの調査で、当時希少だった紫色の染料が使われていたことがわかり、専門家は「天皇の勅願で作られたことがほぼ裏づけられた」としています。

「高雄曼荼羅(たかおまんだら)」と呼ばれる国宝の「紫綾金銀泥絵両界曼荼羅図」は、平安時代初期に、弘法大師・空海が制作に関わったとされ、2幅がそれぞれ縦横4メートルほどあり、仏の悟りと慈悲の世界を、金と銀の線で描いたとされています。
去年(令和5年)まで6年にわたって大規模な修復が行われ、これにあわせて京都国立博物館などが、まんだらを傷つけないよう▼X線を使ったり▼表面から落ちた粉を分析したりする方法で調査を行っていました。
結果は20日に公表され、それによりますと、大量に使われていた染料は「ムラサキ」という植物の根である「紫根(しこん)」だったということです。
紫根は当時非常に希少だったため、まんだらに使われた例は、ほとんどないとみられるということです。
調査に関わった京都国立博物館の大原嘉豊 教育室長は「高価な紫根が使われていたとは思わず、まさかという気持ちだ。淳和天皇の勅願で制作されたという後世の文献の記述が、ほぼ裏づけられたと言える」と話しています。
国宝の「紫綾金銀泥絵両界曼荼羅図」は現在、奈良国立博物館で展示されています。