亀岡「保津川下り」事故1年 船頭2人を追悼 安全運航誓う

去年(令和5年)3月、亀岡市で観光客を乗せた「保津川下り」の舟が転覆した事故から1年となり、現場では28日、運航会社の関係者が事故で亡くなった船頭2人を追悼し、安全運航を誓いました。

去年3月、亀岡市の通称、保津川で、観光客と船頭あわせて29人が乗った川下りの舟が岩にぶつかって転覆し、全員が川に投げ出され、▽船頭の男性2人が死亡したほか、▽当時8歳から64歳までの乗客あわせて19人が低体温症や打撲などのけがをしました。
警察は先週、直前に別の船頭が川に落ちたことが事故につながったなどとして、この船頭を業務上過失致死傷の疑いで書類送検しています。
事故から1年となる28日、亀岡市の保津川下りの乗り場では、船頭など運航会社の関係者およそ90人が集まり、事故で亡くなった船頭の男性2人に祈りがささげられました。
このあと、保津川下りを運航する「保津川遊船企業組合」の豊田知八 代表理事があいさつし、「私たちがやるべきことは、安全運航を徹底して守っていくこと、その自覚と責任を持つことです」と船頭たちに呼びかました。
会社では、舟の改良や安全性の高い救命胴衣の導入など再発防止策を講じたうえで、事故のおよそ4か月後に運航を再開しています。
豊田 代表理事は「亡くなった2人に事故は二度と繰り返さないと誓いました。安全運航を徹底し、保津川下りを後世に引き継いでいきたい」と話していました。

【事故に巻き込まれた女性は】
事故に巻き込まれた女性が、発生から1年になるのを前にNHKに今の心境を明かしました。
女性は当時、一緒に乗っていた娘とともに川に投げ出され、救命胴衣がふくらまないまま下流400メートルまで流され、低体温症で1日入院しました。
女性は、船頭が亡くなった一方でみずからは助かったことに触れ、「ご遺族のつらさははかりしれませんが、救助された者も生きることの重みが心にのしかかるようなつらさを感じています。言葉にすることは難しく、誰かに理解してもらうことも難しいです」としました。
そのうえで、「痛みや傷は時間の経過とともに薄れていますが、心から離れない感情や記憶、そして知りたいと思ってしまう全貌。何もなかった時のように忘れてしまいたいと願う気持ち。矛盾した感情が今の私たちです」とコメントしています。

【外国人客増で安全対策さらに進める】
保津川下りは、事故からおよそ4か月後の去年(令和5年)7月に運航を再開していて、運航会社の「保津川遊船企業組合」によりますと、再開後、年末までに9万6000人余りが乗船し、これは前の年の同じ時期の7割程度だということです。
一方、乗客に占める外国人観光客の割合が年々増えていて、去年1年間ではおよそ6万4000人余りと初めて全体の半数を超えたということです。
運航会社では対応として、乗船時に示す安全対策などのプラカードに事故後、英語のほか中国語、韓国語の表記も加え、注意を促しているということです。
また、今後はより多くの言語で注意を促そうとアプリを開発しているということで、安全対策をさらに進めていくとしています。