伊藤若冲の色鮮やかな巻物状の大作 新たに見つかる

江戸時代に京都で活躍した絵師、伊藤若冲のこれまで知られていなかった色鮮やかな巻物状の大作が新たに見つかり、専門家は若冲の作品を研究するうえで重要な発見だとしています。

新たに見つかったのは、江戸時代中期に京都で活躍した絵師、伊藤若冲の巻物状の作品で、全長3メートル30センチ余りある大作です。
若冲の作風である鮮やかな色彩で、ぶどうやりんごなどの果物や、かぼちゃやとうがんなどの野菜、あわせて40種類ほどがこまやかに描かれていて、記された署名から若冲が76歳の時の作品とみられます。
京都市右京区にある福田美術館では、これまで知られていなかった作品が西ヨーロッパにあるという情報をもとに、去年、存在を確認したうえで若冲の作品だと断定し、購入したということで、「果蔬図巻(かそずかん)」と名付けました。
若冲の作品のなかでも巻物状で彩色が施されているものは、これまで栃木県の美術館が所蔵し、国の重要文化財にも指定されているものだけだったということです。
福田美術館の岡田秀之 学芸課長は「研究者も見たことがない作品が海外にあり、保存状態もよく驚いた。200年前に描かれたとは思えないみずみずしさが感じられる作品だ」と話しています。
今回の発見について、若冲を長年研究してきた東京大学名誉教授の辻惟雄さんは、「いかにも若冲らしい植物に対する愛情が感じられるとともに、自由にのびのび描いている印象もあり、魅力ある作品だと思う。晩年の若冲がどのように作品と向き合っていたのかなど、心境を知るうえで手がかりになる重要な作品だ」と話しています。
この作品は、ことし10月に福田美術館で一般公開されることになっています。