オーバーツーリズム 混雑する公共交通機関 対策は

「オーバーツーリズム」の現場や解決策について考えるシリーズ「観光と生きる」です。
秋の行楽シーズンを目前に控えて懸念されているのが、公共交通機関の混雑です。
生活の足として利用している地元の住民にも影響が出ています。
混雑を解消しようと10月から始まった、バスやタクシーの取り組みを取材しました。

【京都市 バス車内で「地下鉄・バス1日券」販売始める】
観光客の移動手段がバスに集中する事態を防ごうと、京都市は、市営地下鉄と市内を走るバスに1日に何度でも乗車できる「地下鉄・バス1日券」のバス車内での販売を10月から始めました。
市は、地下鉄の利用を促したい考えです。
京都市では、観光地を経由する一部の路線バスが観光客で混雑することが課題となっていて、通勤・通学や通院で利用する地域住民の暮らしにも影響が出ています。
そのため、京都市は、観光客を中心に利用されていた、市内を走るバスに1日に何度でも乗車できる「バス1日券」の販売を9月末で終了し、バスだけでなく市営地下鉄でも利用できる「地下鉄・バス1日券」のバス車内での販売を今月から始めました。
地下鉄の利用も促し、移動手段を分散させることで、混雑の解消を図るということです。
京都市交通局の北尾雅則営業推進課長は「効果はあると思っているが、これだけですべて解決するとは思っていない。さまざまな施策を組み合わせていきたい」と話していました。

【乗り合いタクシー運行始まる】
秋の観光シーズンを前に、京都府タクシー協会は運転手不足やオーバーツーリズムの対策として、京都駅から金閣寺に向かう乗り合いタクシーの運行を始めました。
京都府内では、タクシー会社で働く運転手が4年前から25%以上減っています。
秋の観光シーズンに旅行者が集中することで交通の混雑などの弊害が起きる「オーバーツーリズム」も懸念されるなか、京都府タクシー協会は市内の9つのタクシー会社の協力を得て、来月末までの土曜・日曜・祝日に、京都駅から金閣寺に向かう乗り合いタクシーの運行を初めて試験的に始めました。
運行初日の9月30日、午前9時半すぎの最初の便には京都市伏見区から観光に訪れた女性2人が乗車しました。
車内は運転手が、通り道にどのような観光名所があるかを説明するなど和やかな雰囲気で、30分ほどで目的地の金閣寺に到着しました。
利用した女性は「乗り合いタクシーが始まると聞いて、友達を誘ってきました。なかなか混んでいるバスに乗って行こうとは思わないので、いいサービスだと思います」と話していました。
ただ、運行を開始した最初の週末の利用者はあわせて14人だったため、今後、周知を進めて利用を広げられるかが大きな課題となっています。
京都府タクシー協会の水野憲一さんは「秋の観光シーズンにたくさんの観光客が京都に来ることが予想されるので、同じ方向に行く人には一緒に乗ってもらって、効率のよい輸送を実現していきたいです」と話しています。
乗り合いタクシーは、▼10月は午前9時半すぎから30分間隔、▼観光客のピークが予想される11月は15分間隔で運行します。

【専門家“料金で調整を”】
観光客の利用が大幅に増える中での公共交通のあり方について、オーバーツーリズムに詳しい龍谷大学の阿部大輔教授は「公共交通は基本的に市民の足であり税金で整備が行われている。観光客の存在を前提に整備されているわけではないので、問題が起きてしまっている。ヨーロッパのように市民が払う料金と観光客が払う料金に少し差をつけるなど、料金である程度コントロールしていくことを検討すべき時期にあるのではないか」と話しています。
そのうえで「特に京都市のバスは今まで観光客にあまりにも優遇的な措置を行ってきた。市民としてもバスを使わざるをえないところがたくさんあるので、市民へのサービスと観光客へのサービスを明確に分けて議論すべきだ」と話しています。