建設アスベスト訴訟 建材メーカー5社に賠償命令 京都地裁
建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんなどになったとして、京都府内に住む作業員や遺族などが建材メーカーに損害賠償を求めている集団訴訟で、京都地方裁判所はメーカーの責任を認め、5社に対してあわせて2億2400万円余りを支払うよう命じました。
建設現場で働いていた京都府に住む70歳から81歳の作業員など4人と、亡くなった元作業員26人の遺族は、長年にわたって建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんや中皮腫などになったとして、建材メーカー16社に対して賠償を求めています。
23日の判決で、京都地方裁判所の松山昇平 裁判長は「遅くとも昭和50年にはアスベストの危険性は予見可能だったと認められ、みずからが製造販売した建材の危険性や回避する手段について警告する義務があった」と指摘しました。
そのうえで「市場での製品のシェアがおおむね10%以上だった建材は建設現場で使用されていた可能性が高い」として、5社の責任を認め、あわせて2億2400万円余りを支払うよう命じました。
一方で、解体工だった3人の元作業員について、「建材メーカーは建物の解体に関わる立場になく警告義務を負っていたとはいえない」と指摘するなど、一部の原告の訴えを退けました。
建設現場でのアスベスト被害をめぐっては、元作業員たちによる集団訴訟で、おととし(2021年)5月に最高裁判所が国と建材メーカーの賠償責任を認める判決を出し、国とは各地で和解が進む一方、建材メーカー側とは争いが続いています。
【原告“全員救済されず残念”】
判決のあと、原告が京都市内で会見を開き、受け止めを話しました。
訴えが認められた遺族の北村せつ子さん(79)は、判決のあとの会見で、「30人の被害者全員が勝訴すると確信していた。なぜ全員認められないのか悔しい思いで、不満に感じている」と話しました。
一方、遺族の中村祐之(49)さんは、解体工をしていた父親の被害が認められませんでした。
中村さんは「みな同じ現場で働いてきた仲間であり、訴えを全面的に認めてほしかった。まだこれからも被害者は訴え出てくると思うので、建材メーカーはきちんと責任を認めてほしい」と話していました。
弁護団の村山晃 団長は「判決は、建材メーカーの責任を断罪しており、一定の評価はしなければならない。責任が認められた企業は速やかに救済に応じるように厳しく申し上げたい。一方で、全員が救済されなかったことは残念でならない。救済の道筋を切り開いていくことが我々の責任であり、歩みを止めるわけにはいかない」と話していました。