県内のバス・鉄道運行の5事業者が全国交通系ICカード廃止へ

熊本県内で路線バスや鉄道を運行する5つの事業者が、運賃の決済手段のうち全国交通系ICカードを年内にも廃止し、今年度中にクレジットカードなどのタッチ決済を導入する方針を決めました。

これは27日、県内で路線バスや鉄道を運行する九州産交バス、産交バス、熊本電鉄と熊本バス、それに熊本都市バスの5つの事業者でつくる「共同経営推進室」が会見で発表しました。

それによりますと、運賃の支払いに使われる全国交通系ICカードに対応する機器の更新時期が迫り、検討を進めた結果、更新にかかるコストが大きいことなどから、年内にも廃止することを決めたということです。

コストが半分程度に抑えられるとして、今年度中にクレジットカードなどのタッチ決済に対応する機器を導入する方針だとしています。

一方、現金での支払いや地域限定型の交通系ICカード「くまモンのICカード」は、継続して利用できるということです。

「共同経営推進室」によりますと、昨年度の路線バスと電車の利用者のうち、「くまモンのICカード」は51%、全国交通系ICカードは24%を占めていたということです。

機器の更新は、バスと電車、あわせておよそ900台で行われるということです。

「共同経営推進室」では、交通事業者が全国交通系ICカードによる決済を導入し、その後廃止するケースは、聞いたことがないとしています。

「共同経営推進室」の高田晋室長は、「利用者の方にはご不便をかけることがあると思いますが、理解して頂けるよう丁寧に周知していきたい」と話していました。

熊本県内の5つの事業者が運行するバスや鉄道で、全国交通系ICカードの決済が年内で廃止されることについて、全国交通系ICカードの利用者からは「不便になる」などの声が聞かれました。

27日、熊本市中心部にある「通町筋」のバス停では、ICカードを使って決済し、バスを降りてくる人たちの姿が見られました。

全国交通系ICカードを利用している熊本市の21歳の男子大学生は、「大学が早く終わった日に、町の中心部に行くためによくバスに乗るので困ります」と話していました。

全国交通系ICカードを利用している26歳の女性は、「横浜市の出身で、関東ではふだん交通系ICを使っているので、不便に感じます」と話していました。

今回、5つの交通事業者が、運賃の決済手段のうち全国交通系ICカードを年内にも廃止する方針を決めた背景には、各社の厳しい経営状況があります。

交通5社でつくる「共同経営推進室」によりますと、路線バスや電車に関わる事業の去年9月までの1年間の経常収支は、5社であわせて39億円あまりの赤字となっているということです。

更新の時期が迫った、全国交通系ICカードのシステムを継続した場合、5社全体でかかる費用はおよそ12億1000万円。

この費用は、8年前のシステム導入時にかかった分のおよそ1.5倍にのぼるということです。

一方、クレジットカードなどのタッチ決済に対応する機器を新たに導入した場合は、費用は半分程度の6億7000万円あまりに抑えられるということです。

また、「共同経営推進室」によりますと、国の補助の対象となるのは新規の事業に限られ、継続事業は対象とならないため、システムの更新を選んだ場合、負担が大きくなるということです。

こうした状況から、「共同経営推進室」は全国交通系ICカードによる決済の廃止を決めたとしています。