熊本刑務所 改正刑法施行前に更生手法を専門家と共同研究へ

受刑者の「更生」が目的とされる新たな刑罰「拘禁刑」が来年6月から創設されるのを前に、熊本刑務所は、受刑者と刑務官などによる対話を通じて更生を促す手法について、専門家と共同で研究を行うことになりました。

来年6月から施行される改正された刑法では、条文に受刑者の「更生」を目的とすることが盛り込まれた新たな刑罰「拘禁刑」が創設されます。

23日熊本市中央区で行われた調印式で、熊本刑務所の大坪誠所長と熊本大学大学院の矢原隆行教授の研究室が受刑者の更生のために取り入れている手法について、共同で研究を行う協定を結びました。

研究が行われるのは「リフレクティング」と呼ばれる受刑者と刑務官などが3人以上で行う対話の手法です。

熊本刑務所によりますと、去年から受刑者への指導の一部に「リフレクティング」の手法を取り入れていて、この手法で会話することで、更生への動機を高めることが期待されているということです。

今回の共同研究では、今後5年間、研究室側が刑務官に対話の方法について研修や指導を行いながら、受刑者や刑務所全体にどのような効果が出るか分析していく計画です。

矢原教授は「北欧の刑務所ではこの手法が取り入れられて、効果があったことが知られています。対話によって刑務所内の雰囲気が変わることで、受刑者の更生にもつながっていくことを期待しています」と話していました。

今回、共同で研究が行われることになった背景には、来年6月に控えた新たな刑罰「拘禁刑」の創設があります。

現在の刑法には、受刑者への刑罰として物を作ったり、職業訓練を行ったりする刑務作業が義務づけられている「懲役刑」や刑務作業を行う義務のない「禁錮刑」などがあります。

刑法の見直しが進められ、おととし成立した改正法案では、「懲役刑」と「禁錮刑」をなくし、新たに設けた「拘禁刑」に一本化されることになりました。

熊本刑務所によりますと、刑罰の種類が変わるのは1907年に刑法が制定されて以来、初めてだということです。

今回の改正では刑法の条文に「改善更生を図るため、必要な作業または指導を行うことができる」などと書かれ、「更生」を目的とすることが法律に明示された点が従来の刑罰とは大きく異なっています。

熊本刑務所によりますと、「懲役刑」には、刑務作業が義務づけられていたことから、更生のためのプログラムに時間を割くことが難しい状況だったということですが、「拘禁刑」では、刑務作業が義務ではないため、受刑者それぞれの特性に応じて、社会復帰に必要な指導や教育を行うことが可能になるとしています。

法務省によりますと、刑法犯で検挙された人のうち再犯者の割合を示す「再犯者率」は、2020年の時点で49.1パーセントで、年々、上昇傾向にあるということです。

熊本刑務所は今回の協定によって、対話を通じて更生を促す手法の効果を高めたいとしています。