ダム建設表明に住民は“ダムではなく清流いかした村づくりを”

ダム建設表明に住民は“ダムではなく清流いかした村づくりを”

五木村の黒木晴代さん(67)は、木下丈二村長がダムの建設を受け入れる考えを表明したことについて、「村民の民意はすくい上げられておらず、悔しかったし、悲しかった。ダムではなく、清流をいかした村づくりの方が若者が多く訪れる村になると思う」と話しました。

黒木さんは、五木村を流れる川辺川沿いでペンションを営むとともに観光ガイドも務めていて、訪れる人たちに村内の自然の魅力や歴史を伝えたり、日本を代表する子守唄のひとつ「五木の子守唄」を披露したりしています。

結婚を機に村に移り住んだのは40年あまり前で、当時からダムへの賛否、補償をめぐって住民の間で意見が分かれるなど、わだかまりが生じ、巨大な公共事業の弊害を感じたといいます。

黒木さんは「住民同士で打ち解けて話をしたいのに、ダムが頭にあるから喋ることもままならなかった。水没する場所は、もともと家が多くあり、にぎわっていたのに今は何もない。その前の姿を知っているから悲しい」と振り返りました。

平成20年に、蒲島前知事が計画を白紙撤回したものの、令和2年7月の豪雨を受けて方針を翻し、流水型ダムの建設を国に求めたことに戸惑いを感じながらも、国の環境への影響調査に対して意見書を提出したほか、県が開く公述会に参加しました。

黒木さんは「川とともに生態系が壊れ、魚が消える可能性は残っていると思う。日本一大きなダムを作るという実験材料に使われてる気がして、怒りしか感じない」と語りました。

21日の集会に参加した黒木さんは、村長がダムの建設を受け入れる考えを表明した際に、目元を拭い、その後も目を閉じて話を聞きました。

黒木さんは「住民が意見を述べられる集会がもっとたくさん開かれればよかったのに、いきなり、きょう村長が考えを表明した。民意がすくい上げられず、悔しかったし、悲しかった。小さいけれども、振興策で頑張ってきた村になぜダムをもってくるのだろうと思います。水につかるという場所には多くの平地があって、住む場所も企業を誘致できる場所もある。想像ができないダムを建てるよりも、清流をいかした村づくりのほうが若者も多く訪れる村になると思う」と話していました。